583 手紙 下
「あ、部屋を用意しないといけないか」
部屋が用意できないからルーセル様には城に行ってもらったのよね。
二人は春を目標に来るみたいだから、それまでお城が完成すれば大丈夫でしょう。
わたしが目指しているのはシンデレラが住みそうなお城ではなくベルサイユ宮殿みたいなお城だ。建物を一つ一つ造っていくスタイル。今のところ二つはできて、一つは内装に取りかかっているわ。
そこはルーセル様に使ってもらうとして、次にマリアラ様。マリベルはわたしと同室としましょうか。
まだ春まで二月近くある。雪も降らないことだし、なんとかなるでしょうよ。
次の手紙に手を伸ばしたらライリル・マガルカって方の手紙だった。
「モリエ。この方、どなたかしら? 名前に覚えがないのだけれど」
「お妃様の侍女頭様ですね」
なんでもマガルカ伯爵様のご夫人で、今の王宮を仕切っている方だそうだ。
「あなたたちもライリル様の下にいるの?」
「…………」
ライリル様は表で裏にまた誰かがいるってことか。
「あなたたちはわかりやすいのが欠点よね。育てた者が人を表面的にしか知らないのかしらね?」
演技は上手いんだけど、上手すぎるが故に演技とわかるのよね。守秘義務も強いから真実を突かれると黙ってしまう。そこはキョトンとしたほうがいいのにね。言えないってことが先に来ちゃうのよね。
「まあ、いいわ。そちらの教育問題だからね。問題解決はそちらでやってちょうだい。で、ライリル様はなぜ手紙を送ってきたのかしら?」
優先度を決めたのはモリエだ。意図があってそうしたのでしょう。
「ご挨拶だと思います」
「今さら? 表と裏はちゃんと意志疎通が取れているの?」
「…………」
だからそこで黙るからダメなのよ。意志疎通取れてないってことを証明しているものじゃない。まあ、これがわざとなら見事なものだけど。
「お妃様が動き出した、ってことかしらね?」
これまではお妃様の配下、おそらく裏のほうがわたしと接触していたのでしょう。
表が出て来たってことはそれだけわたしからの贈り物や動向が広まっているってことでしょうね。
「窓口は少ないほうが助かるんだけどね~」
裏はまだ配慮ができている。わたしを利用するなり味方にしようと画策しているからね。
でも、表は配慮とかあまりしない。命令する立場だからね。下のことなんて考えたりしないわ。よほど重要人物でもなければ、ね。
「ライリル様の情報は?」
「こちらに」
出したってことは油断するなってことでしょう。
「知恵比べとか正直苦手なのよね。……なにか言いたそうな顔ね?」
「いえ。チェレミー様の思うままに動けばよろしいと思います」
丸投げかい。まったく、貴族の相手は疲れるわ……。




