582 手紙 上
これと言った問題もなく時は過ぎ、転移の日が近づいて来たので帰ることにした。
まあ、問題はなかったけど、やることはたくさん。シューティングスターに跨がる元気もないので馬車に乗ることにする。
帰りは荷物も少ないので十時くらいに馬車に乗り込んだ。
「ルーセル様。また会いに来ますね」
「はい。楽しみにしております」
春までは城で過ごしてもらうことにしてもらっている。それまではわたしが通うことにしているのよ。
「ロンシャ。おれは先に帰る」
この数日ですっかり引き締まったシューティングスター。なにしてたん?
「城の女たちと遊んでいた。もう疲れたから先に帰って休むよ」
人間だったらクズでしかないけど、馬の世界では優秀な種馬。よかったわね、一角獣に生まれて。
「太らないていどにね」
「了解。ではな──」
わたしの一角獣であることは知られているからちょっかいを受けることもないでしょう。リンゴに釣られて寄り道しそうな気はするけどね。
「少し眠るわ」
結構夜中までルーセル様やレアナとおしゃべりしたから眠くて仕方がないわ。帰ってからもやることはあるんだから馬車で眠っておくとしましょう。おやすみ~。
………………。
…………。
……。
で、起こされたら館に着いていた。
「お風呂で目を覚ますわ」
まだちょっと寝たりないけど、まだ三時くらい。夜に寝るためにもここは目を覚ましておきましょう。
お風呂に向かうと、珍しくコノメノウ様が入っていた。どうしました?
「かまくらも溶けたんでな、風呂で一杯やっていた」
この方が一番スローなライフを送っているわよね。わたしは忙しくしているというのに……。
「暇なら仕事でもしますか?」
「暇ではない。酒を飲んだり昼寝したりと忙しいんだ」
それを暇って言うのよ。堕落した獣め。
湯に入って眠気をふっ飛ばし、よく冷えたリンゴジュースで水分を補給した。
「お嬢様。服を着てください」
「もうしばらくこのままでいさせてよ」
こんなことできるの館にいるときだけ。ダラケるのも精神衛生上いいものなのよ。
体が冷えたら服を着て執務室に向かった。
「お嬢様。手紙が届いております」
離れていたから結構な数が積まれていた。
陳情書や近況報告だったりと、読むのも一苦労よね。もうちょっと楽にならないもんかしらね?
とりあえず優先度の高いものを選別してくれてあるので、優先度(急)から読んでいった。
「マリベル、ここに来るのが正式に決まったようね」
マルビオ伯爵様は完全にこちらにシフトしたようね。
「あら、マリアラ様も来るのね」
手紙にはしばらく預かって欲しいとのことだった。
理由は書いてなかったけど、マルビオ伯爵様の支援がいただけるなら構わない。喜んでと返事を書いておきましょう。




