574 特別経済区都市 上
夕食まで時間があるのでレアナたちとおしゃべりを──とはならず、叔父様に首根っこをつかまれて執務室に連れて行かれてしまった。
「お前はカルディムをどうしたいか話さんか」
「それは前から言っているではありませんか」
カルディム領全体を変えるつもりはなく、館の周辺を特別経済区都市を創ると。そのために動いていると伝えてあるじゃない。
「そこにゴズメ王国が加わり、ルーセル様がどう繋がる? お前はいったいどんな未来を思い浮かべているのだ?」
おっぱいぱいな世界ですが? なんて答えられるわけもなし。わたしの桃源郷は言葉で語り尽くせないものなのよ。
「コルディーのさらなる発展を見ています」
「伯爵の娘が求めるものではないだろう。人並みな幸せを求めたらいいだろう」
わたしの幸せはおっぱいとともにある。おっぱいがない世界など地獄もいいとこ。いや、虎のビキニを着た鬼のおねーさんがいたら天国か。わたしはそこにおっぱいがあるなら地獄をも支配してみせるわ!
って妄想は横に置いといて、だ。領地と周辺しか見えてない叔父様にどう説明したものか。
「幸せを求めるには平和な国でなければいけません。平和な国は強くなくてはいけません。強くあるにはお金がないといけません。お金を持つには稼ぐしかありません。どこから始めようとこの輪に入ってしまったら抜け出せないのです。貴族はその輪の中でしか生きられません」
貴族は力がなくてはならない。力を持つにはお金がなくてはならない。お金を稼ぐには民から吸い上げなくてはならない。吸い上げるには民を豊かにしなくてはならない。この輪を作った者が貴族としてやって行けているのよ。
「カルディム家を豊かにすれば周りから嫉妬を受ける。周りと合わせていたら埋もれるだけ。あとに回れば潰されるか利用されるだけ。家を残すには潰されない力を身につけるしかありません」
「…………」
それはわかっているのでしょう。反論できないのだからね。
「叔父様は爵位を下げることはできますか?」
「……無理だ。できない……」
「では、上げることは?」
「……不可能だろう、それは……」
伯爵の上は侯爵。その間には越えられない壁がある。歴史的事件を解決するか王国を救うような働きをさしないと侯爵に上がることはできないでしょうよ。
「では、伯爵として王国に必要不可欠の存在になるしかありません」
「……兄上が胃を痛めそうだな……」
「そこはわたしが受け持ちます」
お父様に任せたら三日としないで頭髪が枯れるでしょうよ。
「お前のあとはどうする? 誰に継がせるのだ?」
「養子を取ればよろしいでしょう。カルディム家は利だけもらって特別経済区都市に関知しなければいいです」
カルディム家はお兄様が継ぐし、領地を守るのはナジェスがいる。あとは、二人にたくさん子供を作ってもらいましょう。
……お父様も叔父様も貴族にしては珍しく愛人を作らない人なのよね……。




