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57 永遠の乙女

「……と言うか、二人に懐かれすぎじゃないか?」


 二人に腕をつかまれて身動きするのも大変なわたし。モテモテね……。


「そうですね。懐かれるようなことした記憶がないんですけど」


 従弟妹を普通に可愛がっていただけなのに。この年代はそういうものなのかしらね?


 ……まあ、わたしも前世じゃ従姉にべったり懐いてたけどさ……。


「失礼します。奥様。お嬢様。旦那様がお呼びです」


 と、メアリアがやってきた。そうだったわね。叔父様に挨拶しないと。


「二人とも。またあとでね」


 教育はしっかりされているようで、渋々ながらも解放してくれた。いい子いい子。


「まるで母親だな」


「わたしはまだ乙女ですよ」


 ふっ。ムッツリストを舐めないで欲しいわ。前世も今生も永遠の存在になることくらい屁でもない。そこにおっぱいがあるならわたしは生をまっとうできるのよ!


 誇り高き永遠のおっぱい大好き乙女。それが今生のわたしだわ!


 メアリアに先導されて叔母様と叔父様のところへ。今回のことを話し合った。


 まあ、大体のことは手紙でやり取りしているので、話し合いは十分もしないで終了。孤児院へは明日の昼前にいくことに決めた。


 じゃあ、お開きに──とはならず、次は領内のこと、ライグル家から買う卵のこと、火つけ杖を増産したいことなどを夕食まで話し合いました。わたし、すっかり領地経営に付き合わされてるわ……。


「叔父様。そろそろコノメノウ様にご挨拶したほうがよろしいですよ」


「……そうだったな。まさか守護聖獣様を連れてくるとは。本当に国から目をつけられているのだな、お前は……」


 夢であって欲しかったと嘆く叔父様。まあ、しがない領主代理には荷が重いでしょうよ。相手はこの国の神と言ってもいい存在なんだからね。 


「目をつけられたのなら入り込んでしまえばよいのです。脅威なり有益なり、相手はこちらに興味を持っているのですからね」


 それは相手の隙だ。わざわざ開けてくれたんだから飛び込んでしまえばいいのよ。もっとも、出世欲がないと辛いだけでしょうけどね。


「まあ、叔父様は失礼がないようにしていれば構いませんよ。あちらが気にしているのはわたし。わたしが隙を見せなければいいだけのこと。もし、カルディム家に害があるならわたしを切ってくれて構いません。わたしは素直に罰せられますから」


 それも選択肢の一つ。乙女を守るなら有効に使わせてもらうわ。


「……怖い娘だよ……」


「わたしは平和を望んでいるだけですよ」


 もちろん、襲いくる脅威はどんな手段を用いても排除させてもらいますけどね。ふふ。


「さあ、叔父様。叔母様。コノメノウ様に挨拶を致しましょうか」


 その場はマーナたちに指示を出し、マルセオたちに仕切らせている。今日の今日で叔父様たちに準備しろってのは酷だからね。


「コノメノウ様は堅苦しいことは望みません。失礼がなければ自然体で構いませんよ」


 緊張する二人。さすがの叔母様も口数が少なくなっているわ。


 サロン的な部屋へ向かうと、コノメノウ様はブランデーを楽しんでいた。


「おう、きたか。勝手に楽しませてもらっているぞ」


 この方も王都では苦労してそうね。挨拶は下の者からする。なのに、まるで酒屋のオヤジみたいなノリで先に口を開いた。貴族しか知らない二人にはどうしていいかわからないでしょうよ。


「それはようございました。ブランデーはお気に召しましたか?」


 この日がくるだろうと予測してブランデーは出さなかったのよ。


「おお。これは香りがよくて好きだ。ガツンとくるのに風味が繊細。鼻から抜ける香りがまたいい」


 清酒より饒舌になっているわね。王都ではどんなものを飲んでいたのかしら?


「コノメノウ様。叔父と叔母です。挨拶をさせてもらってよろしいでしょうか?」


「ああ、そうだったな。よろしく頼むぞ」


「は、はい。ロングルド・カルディムです。守護聖獣様に会えて光栄です」


「妻のレイア・カルディムです。ようこそいらっしゃいました」


 コノメノウ様の雑な挨拶に合わせて軽く挨拶する叔父様と叔母様。こういうところが二人の凄いところだと思うわ。相手の調子に合わせられるんだからね。


「まあ、わしのことは構うな。こちらはこちらで好きにやるんでな」


 それが一番困るのだけれど、館でも好きにさせているのだから今さらよね。


「叔父様。コノメノウ様はこちらでみますのでいつものとおりに過ごしてください。わたしのメイドと騎士を使いますので」


 この国にコノメノウ様を害する者はいない。形だけ整えておけば問題ないわ。


「……チェ、チェレミー……」


「そいつの言葉どおりで構わぬ。あれこれ口を出されるほうが不快だ。そなたらに迷惑はかけぬから心配するな」


「とのことです。コノメノウ様の思いを尊重致しましょう。構いませんね、叔父様?」


「あ、ああ。コノメノウ様。ごゆるりとお過ごしくださいませ」


 一礼してわたしたちは部屋をあとにする。


「マルセオ。呼ばれるまでは構わなくていいわ。マーナはたまに顔を出してちょうだい。ルーアたちは交代で見張りをお願いね」


 そうお願いしてわたしたちは夕食といきましょうか。

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