562 投資 上
わたしと言う抑止力があるから商人たちも大人しく、お互いを尊重しているから問題はない。
けど、ルールや転移のことはわたしがいないと困るようで、商人たちの会合に参加して欲しいと要望があった。
王妃様はさすがに上位者すぎるので、ルーセル様に同席してもらうことにした。
お互い、五人対五人にしてもらい、まずはお互いの主張を語ってもらった。
この前に大まかなことは語り合ったのでしょう。そう相違はなく、麦の値段を基準にして双方の為替手形、か? そういうものを決めたようだ。
「この短期によく纏めたものね」
他国との商売なんて問題ばかりなのに、よく纏めたものだわ。
「チェレミー様が目指すところを思えば我々はそこに向かって全力を出させていただきます」
とは、ロイヤード。
「チェレミー様は他国との友好、商売の大切さをご理解いただけるお方。我々は全力でお支えさせていただきます」
なんだか面倒な解釈のされ方してんなー。
まあ、間違ってはいないんだけど、なんか壮大な野望を抱いているヤツって思われてない? わたしはただ、温泉に浸かりにきただけなのに……。
とは言え、ゴズメ王国との繋がりは必要だし、ゴズメ王国の品は生活を豊かにしてくれる。今さら切れと言われてもできない。双方の守護聖獣様が許さないでしょうよ。
……面倒にしているのは酒カスと菓子カスが関わっているってこともあるのよね……。
「わたしとしては双方の商売が盛んになってくれれば嬉しいわ。でも、その距離が絶望的。転移しなければ両国が繋がることはないわ」
海から繋がる方法はムゼング公爵様が進めてくれるでしょうけど、そこでも距離が問題だ。航路が作られるまで数年はかかるでしょうよ。
「細い繋がりでもいずれ太い繋がりになるでしょう。それまでに用意することは多々あるわ。今はこの細い繋がりで関わっていきましょう」
大儲けには繋がらないでしょうけど、将来の投資と思えば価値はある。そう思ったからこそ商人たちは動いているのでしょう。
「はい。この繋がりを大事にしたいと思います」
「わたしどもも同じです」
双方、やる気と覚悟はあるようだ。
「転移をするには魔力が必要。これを溜めるには数日かかるわ。定期的に転移することは無理でしょう。もう少し改良すれば一回で荷馬車二十台は可能となるでしょう。その辺の采配はあなたたちに任せるわ」
転移羽根も改良する必要がある。最初の一年は月三回くらいを目標としましょうかね。
「この会合も定期的に開きましょう。ただ、わたしもやることが多いのでルーセル様にお願いすることもあります。そのときはよろしくお願いするわ」




