557 死の指輪 下
わたしの命を人質にしたのなら次は言い訳とルールを決める必要がある。
転移魔法陣はもはや周知の事実となった以上、隠すのは悪手だ。逆にこれを利用するとしましょう。
三日に一度の転移は変えず、改善できたと量を増やすとしましょう。最終的には馬車十台分とすればいいわ。
転移羽根は三級以上の魔力を持っていれば往復はできるけど、魔力を溜めるって理由にすれば四級か五級でも構わないでしょう。
決められた者にしか発動できないようにすることも必要か。最初はわたしがやるとして、いずれは転移部を創って任せる。問題は誰にやらせるかよね。
秘密を守られることは当然として、転移羽根を誰かに渡したら困るでは済まない。外部から威しが入らない人物でなくてはならない。
いや待てよ。三日に一度にしなくてもよいのではないか? 転移には魔力が必要だってことも知られている。なら、定期的に魔力を集められるわけでもない。不定期でも構わないんじゃないか?
そうよね。流通がありすぎてもこちらに片寄ってしまう。海からのルートが途絶えても困るわ。
「お嬢様。戻っていたのですね」
あ、考えに集中しすぎてたわ。
「ええ。商人たちは?」
「お嬢様を待っております」
そうだったわね。詳しい説明をしてないんだから。
「そう。わたしから説明をするから集めてちょうだい」
とりあえず荷物をコルディーに運ばなくちゃならない。改善したと言って荷馬車五台分を転移させるとしましょう。
商人を集めてもらったら転移魔法陣の改善を進めていると告げ、荷馬車五台分を運んでもらい、タルル様に転移してもらった。
「面倒だな」
「我慢してください。その分の報酬は支払わせていただきますので」
充分すぎるほどお菓子を食べられているけど、素直に働いてくれるのなら安いもの。馬車馬のように働いてください。
「もう溜めた魔力がなくなったので十日は待ってちょうだいね」
あちらも片付けに時間がかかる。十日は時間を置かないと次が送れないわ。
「はい。問題ございません。こんなよい商売はありませんから十日でも二十日でも待たせていただきます」
「さすがにそんなに待たせては申し訳ないからコルディーのもの──ではないけど、カルディム家で作っているお酒を安く譲るわ」
帝国から買ったお米で清酒を結構作った。麦焼酎もあるからコルディーのものとして売るとしましょうか。
「装飾品はありますか?」
「そう希少な石や金属は使ってないものならあるかしら? でも、そう利益を出せるものではないわよ」
カルディム領では需要のないもの。民が買うようなものばかりのはずだ。たまに婦人会の方が買いにきているみたいだし。
「それで構いません。異国の品に価値があるので」
その辺の商売は商人に任せるとしましょう。
「わかったわ。取り揃えてみるわ」
「ありがとうございます」
片付けのためにまたコルディーに転移してもらった。




