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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん


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55 孤児院へ

 不思議なものよね。前世で身につけた技術が転生しても使えるって。


 体で覚えたことは何年経っても忘れない。それはわかる。けど、生まれ変わって肉体が新しいものになったのに、リリヤンができている。


「お嬢様。上手ですね」


 ずっと見ていたアマリアが素で褒めてくれた。


「ありがとう。でも、まだまだね」


 それなりにできたとは思うけど、結構手間取ったし、あの頃のように指も動かなかった。二時間もあれば帽子を編めたのにな~。


 まあ、時間はあるんだからそのうち慣れてくるでしょうよ。


 ブレスレットを十個も編むと勘が目覚めてきたのか、二十分で一つを編めるようになった。


 けど、ちょっと集中しすぎたわね。肩が凝ってしまったわ。


 顔を上げたらアマリアと目が合ってしまった。なに?


「お嬢様。わたしもやりたいです」


 いつも大人しくしているアマリアが珍しく主張してきた。こういうのが好きなのかしら?


「いいわよ」


 引き出しから五本爪の編み器とかぎ針を出してアマリアに渡した。


 長椅子に場所を移し、横に並んで編み方を教えると、才能があるのか手先が器用なのか、すぐに覚えてしまった。


「上手じゃない。アマリアは才能があるわ」


「ありがとうございます!」


 褒められて喜ぶアマリア。可愛いこと。


 時間があるときはアマリアとリリヤンを編んでいると、服飾メイドのライラナがやってきた。どうしたの?


「お嬢様。わたしにも教えてください」


 ん? リリヤンのこと?


「やりたいの?」


「はい。アマリアの編んだものを見て、わたしも覚えたくなりました!」


 随分とやる気満々ね。そんなに魅力あるものではないでしょうに。


「まあ、やりたいと言うなら構わないわよ」


 別に隠すものではないし、断る理由もない。やりたいなら好きにしなさい、だ。


「お嬢様。孤児院に贈る下着や服ができました」


 今日も今日とてリリヤン編みをしていると、服飾メイドのカナが報告にやってきた。


「あー。そうだったわね。すっかり忘れてたわ」


 コノメノウ様やリリヤンのことで頭から溢れ落ちてた。孤児を二人、館で預かるんだったわね。


 呼び鈴を鳴らすと、ラティアがやってきた。


 そう言えば、ラティアを見るの久しぶりね。いつもはラグラナかマーナのどちらかだったし。


「領都の孤児院にいくから用意してちょうだい」


「畏まりました」


 用意は任せてわたしは編んだブレスレットに熱の付与と治癒力を施した。


 二日後。準備が整ったの報告が上がってきた。


 孤児院に向かうのはわたし。マーナとラン。兵士が三人。護衛騎士の四人。そして、コノメノウ様だ。


「たまには外に出んとな」


 またどうして? と尋ねたらそんな答えが返ってきた。


 まあ、この国の守護聖獣様の言葉を無下にはできない。いくと言うなら承諾するしかないわ。


「そなたは馬車に乗らんのか?」


 ラナに跨がったらコノメノウ様が可愛く首を傾げた。


「はい。ラナやレオを可愛がらないといけませんからね」


 ウォーキングに付き合わせているけど、騎馬──騎鳥することはなかなかない。人が乗るために生まれたのだから乗ってあげないとね。二匹もわたしが乗ると嬉しそうだし。


「ふむ。わしも乗ってみたいな」


 なんの気まぐれか、乗りたいと言い出すコノメノウ様。すぐに服飾メイドを総動員させて騎乗服を作らせた。


 まあ、わたしやランの騎乗服を作らせていたから寸法を変えるだけで大した時間はかかってない。またこんなことがあると困るからコノメノウ様のを作らせておきましょう。


「レオよろしく頼むぞ」


「グワァー!」


 たまにウォーキングを一緒にするのでレオもコノメノウ様に慣れている。すんなりと騎乗できた。では、わたしもっと。


「ルーア。あとはよろしくね」


「はい。皆、騎乗よ」


 あとは護衛騎士に任せる。わたしは守られる立場だからね。


 先頭はルーアとマリアナ。その後ろにわたし。次にコノメノウ様。馬車二台、最後尾にジェンとカエラだ。


「出発!」


 ルーアの号令で出発。館の皆に見送られて領都に向かった。


 冬の寒さが頬に当たるけど、カイロ化したブレスレットやマフラー、帽子や手袋のお陰でちょっと暑いくらい。途中で外さないと汗だくになっちゃうわね。


 進行は順調で、九時くらいに小休憩。空の下で飲むコーヒーもいいものね。暖かくなったらピクニックにでもきましょうか。


「コノメノウ様。寒くありませんか?」


「問題ない。気持ちよいくらいだ」


 でしょうね。熱燗を飲みながら乗っているんだから。二重の意味で酔わないわよね。


「マーナたちは大丈夫?」


「はい。揺れないので穏やかに乗っていられます」


 振動吸収のクッションが役に立っているようね。よかったよかった。


 全員の体調を確認したら再出発。昼まで進んだら領都の前で昼食とし、その間に兵士にわたしたちが着くことを知らせに走ってもらった。


 パンとシチュー、アップルパイと言っただけのものだけど、やはり寒い外で食べるといつも以上に美味しく感じる。不思議なものよね。


「温めた甘酒も美味しいものですね」


 交代で食べていたマリアナが甘酒にホッとしていた。


「お腹の調子にいいし、肌や髪にもいいのよ。飲みすぎると太っちゃうけどね」


 最初、甘酒は不人気だったけど、その効果を知ったメイドたちに流行り出し、騎士たちも飲むようになったわ。


「お嬢様。城から迎えがきました」


 兵士の連絡に視線を向けたら三人の騎士とナジェスがやってきた。


「ナジェスまできちゃったのね」


「姉様!」


 馬を降りたら突進してくるナジェス。ふふ。まだまだ子供ね。


「お迎えありがとう。城までの護衛、お願いね」


「はい! お任せください!」


 子犬のように喜ぶナジェス。男の子も可愛いものね。

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