545 そろそろ帰宅 下
「タルル様。午後からコルディーに連れていってください」
毎日三食いただきお菓子も食べるタルル様。この方の胃ってどうなっているのかしらね?
「わかった」
あっさり答えると、食事を始めてしまった。
ここでは食堂にやってきたら好きに食事を始めていいようにしてある。皆集まって一斉に食事って面倒なのよね。
食事をいただいたら皆で食休み。巫女たちにも一月後くらいに帰ることを告げた。
「用意はこちらで行うからゆっくり過ごしてていいからね」
王都に戻る組とコルディーに向かう組で過ごすのもあと僅か。今生の別れってわけじゃないけど、滅多に会えることはなくなる。今のうちに親睦を深めておくといいわ。もう姉妹みたいな関係なんだからね。
「はい。わかりました」
巫女たちにも一般教養一般常識は身につけて欲しい。自由時間を自分の意思で過ごせるようにもなって欲しいので、わたしからなにをしろこれをしろとは言わない。じゃあ、と言って食堂を出た。
「タルル様。よろしいですか?」
自室に戻り、頭の上に立つタルル様に尋ねた。
「構わんよ」
「ロジィーと翠玉もいらっしゃい。これから暮らす場所を見せてあげるわ」
コルディーに連れていくことは伝え、二人からは承諾を得ている。もちろん、ゴズメ王国からも承諾は得ておりますよ。
ロジィーと翠玉の手を取り、タルル様に転移してもらった。
館の執務室に現れ、呼び鈴を鳴らす。
そこにいたのかという速さで扉が開いてモリエが入ってきた。
「お帰りなさいませ、チェレミー様」
「ただいま。マクライとローラを呼んでちょうだい」
すぐに二人がやってきて一月後くらいを予定して帰ることを告げ、ロジィーと翠玉を紹介した。
「ローラにロジィーを預けるわ。いろいろ教えてあげて。翠玉は適当に見て回りなさい。なにかあればメイドに言いなさいね」
ゴズメ王国でも翠玉は好きにさせていた。妖精はいるだけで意味があるっぽいからね。
「キャラメルはどうしている?」
ゴズメ王国に連れていったものの馴染めなかったみたいで途中でタルル様に戻してもらったのよね。決して放置していたわけではありませんよ。
「元気に過ごしております」
「そう。帰ってきたら相手してあげないとね。なにか問題は?」
「特に大きな問題はありません。極々平和な日々でございます」
なんだろう? わたしがいないほうが平和なの? わたしがいるから問題が起きるの? わたし、呪われている?
「……なんだかどっと疲れたわ……」
「帰ってきたらゆっくりしてください」
ゆっくりするためにゴズメ王国にいったんだけどね。
「詳しい報告は帰ってからにするわ。近況を聞かせてちょうだい」
報告は一気に聞くと疲れるからね。体力気力があるときに聞いておくとしましょうか。
二人はローラに任せてマクライから近況を聞かせてもらった。




