538 プリッケツ 上
妖精がやっと目を覚ました。
「……どこ、ここ……?」
まるで元いた場所がわかってそうな言葉ね。
「新たに生まれた世界樹だ。お前は初めての子だ」
え? 世界樹が母親ってなること? 妖精、やっぱ植物?
「……でも、わ、わたしは……」
「記憶が残っているのか?」
「記憶の残滓でしょう。魂はそのままなのですから」
わたしも前世の記憶を残している。なら、魂に記憶が刻まれていても不思議ではないわ。デジャブ的な感じでしょうよ。
「過ごしていれば消えると思いますよ。そこまで強い記憶ではないみたいなので。それより、名前を持って生まれたわけではないのですね」
「当たり前だ。名前を持って産まれる者がいたら見てみたいわ」
そりゃごもっとも。
「では、タルル様がこの子に名前をつけてあげてください」
「お前がつけろ。こいつをここに残しておいても幸せにはなれんだろうからな」
まあ、渦を宿し、渦を人に宿らせることができる個体。神殿に預けたら監禁されるだけか。検体はあの男だけで充分だわ。
「では、翠玉と名づけます」
「帝国の言葉だな……なんだ?」
「いえ、コノメノウ様、案外学があったので──痛っ!」
コノメノウ様にお尻を蹴られてしまった。暴力反対!
「そなたがわたしをどう見ておるかわかったよ」
ま、まさか、ただの酒カスって思ってたのがバレ──痛っ!!
「……け、蹴らないでくださいよ。お尻が壊れるじゃないですか……」
わたしのプリッケツは繊細なんですからね。
「お嬢様。すぐに冷やさないと」
「人前で止めて!」
わたしにも羞恥心ってもんはあるのよ! 人前でプリッケツを晒せるか! スカートを捲るな!
「さっさと部屋に運べ。タルル。そやつに一般教養を教えてやれ」
まず自分が一般教養を学べや! 酒カスが!
「はいはい、お嬢様。お部屋にいきましょうね」
ラグラナに抱えられて部屋に。スカートを捲られ、氷袋を当てられた。なに、この辱しめは?
「お尻が真っ赤です」
でしょうね。手加減なしの蹴りだったし。
「と言うか、なぜ皆でわたしのお尻を見ているのよ」
プリッケツ愛好家の方々ですか?
「お嬢様にも恥ずかしいって概念があったのですね」
あるわよ! 普通に! 人を厚顔無恥みたいに言わないで! いや、そのとおりじゃん。とかは聞こえません。
「大丈夫ですよ。お嬢様のお尻は可愛いですから」
「そうですよ。可哀想に。こんなに真っ赤になって」
止めてちょうだい。皆で擦るの。この歳になってお尻を擦られるとかなんの拷問よ。
ハァー。次からプリッケツを強化しておかないとな~。




