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480 夕食 下

 案内された場所はお昼にきた食堂ではなく、晩餐会でも開きそうな広間で、たくさんの人が集まっていた。


 ……この世界に立食なんてあったんだ……。


「ムゼング家でよく行われる立食会でございます」


 侍女がそっと教えてくれた。うん。先に言えや。


「あるとは聞いていたけど、ここが発祥だったのね」


 まあ、発祥かは知らんけど、コルディーでは聞かないんだからムゼング家が発祥でも構わないでしょう。違ってたら訂正すればいいんだしね。


 主賓は最後に、って感じっぽいのでざっと場内を見回す。


 お皿を持って食べており、飲み物はテーブルに置いてある。メイドやボーイらしき者は壁に立っており、なくなったら近づいてさりげなく進めるって感じっぽいわね。


「形式張らない形の夕食会、ってところかしら?」


「はい。そのような感じです」


 冷静を装っているけど、驚いた態度が出ているわ。


「ふふ。試されたのかしら? 考えた人はいじわるね」


 事前報告をしなかったのはわざとか。わたしに恥をかかせようってよりはわたしを探るための情報収集ってことなのかもしれないわね。


「チェレミー様」


 ルーセル様も主賓級なので、わたしと同じくくらいに案内されてきた。


「あら、珍しい形の夕食ですのね」


 ルーセル様も知らないのか。ゴズメ王国でも立食はそこまで受け入れられたものじゃないようね。


「ルーセル様。チェレミー嬢。ムゼング領の料理を用意した。固っ苦しい作法はない。気軽にムゼング領の料理を楽しんでくれ」


「ありがとうございます。とてもよい夕食ですね。これが広まればもっと楽しい会になるでしょう。我が国でも取り入れていきたいものですわ」


「やはりチェレミー嬢は理解してくれるか。この形式は国内ではあまり受け入れられないのだ」


「それは残念です。とてもよいものなのに。我が国でもムゼング形式をどんどん取り入れていきますわ」


「ムゼング形式か。それはいいな。我が名が広まってくれることを願うよ」


 この方は典型的な貴族なのね。いい意味でも悪い意味でも貴族の中の貴族だわ。


「そうですね。ムゼング式立食として広まるでしょう。どのようなものかしっかりと学ばせていただきますわ」


「アハハ! そうかそうか。ムゼング形立食か。それはいいな。うん! マレリカ。チェレミー嬢にムゼング式を教えてくれ」


 あんたがやらないんかーい! とは突っ込まないでおく。こういう奥向きの仕事は夫人の仕事であることが多いからね。


「マレリカ様。よろしくお願い致します」


「ええ。お任せください」


 マレリカ様は他から嫁いできたのにやる気満々ね。すっかりムゼング家の女って感じなのかしらね? わたしは嫁ぐって意味は一生知らなくてもいいわね。

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