426 学問 下
「ラーダニア様。クヌキ苺もいただけますか?」
「はい。構いませんよ」
植物園をよいしょしていたら職員たちに気に入ってもらえ、少しずつわけてくれるようになったのよね(ニヤリ)。
そう大量に栽培しているわけではないので一キロにも満たない量をいただいたけど、本当に欲しかったのは種だ。種さえ手に入ればわたしの付与魔法でどうとでもなる。増やすことも品種改良をするのも、ね。
……もちろん、品種改良したらゴズメ王国に献上しますわよ。代わりに種を保存してくれるんだからね……。
「それもお菓子に使うのですか?」
「果物はそのためにあると言っても過言ではありませんよ」
いや、過言だよ! って突っ込みは受付ません。
「お城に帰ったらクヌキ苺を使ったお菓子を作りますから食べてみてください」
「それは嬉しい申し出ですが、この量では争奪戦が起こるのではありませんか?」
ラーダニア様の目がわたしの頭に向いている。
言わなくてもわかるでしょうけど、わたしの頭の上にはお菓子大好き妖精さんがいます。きっとラーダニア様を睨んでいるんでしょうよ。
「大丈夫ですよ。増やしますから」
わたしには魔力タンクが二つもある。クヌキ苺を増殖させるくらいなんてことはないわ。双方から半分もいただけば大量に作られるわ。
「せっかく熟しているものですし、さっそくお城に帰って作りましょうか。タルル様。魔力をいただけますか?」
「必要なのか?」
「四種類は作りたいので必要ですね」
ショートケーキ、苺大福、タルト、ジャムパンはとりあえず作りたいわね。わたし、恥ずかしながらショートケーキって結構好きなのですよ。
「いいだろう。コノメノウの魔力も使うがよい」
お菓子のためなら他国の守護聖獣すら巻き込むタルル様。まあ、コノメノウ様も同じなんだからどっちもどっちよね……。
「園長様。明日もよろしくお願い致しますね」
さすがに果物ばかり見てもいられない。他にもたくさん珍しい植物はあるんだからね。
「はい。お待ちしております」
職員たちに見送られて植物園をあとにし、お城に着いたらさっそく厨房に入った。
「ナディア。スポンジケーキは作ってある?」
「はい。生クリームも用意してあります」
お前、もらう前提でいったな? とかは訊いちゃイヤン。たまたまよ、たまたま。
「じゃあ、クヌキ苺は洗ってそのまま入れてちょうだい」
元の世界のように甘くないけど、酸味はある。スポンジケーキと生クリームの甘さでちょうどよくなるでしょうよ。
「わたしは、ジャムを作るわ」
創造の壺で増やしたクヌキ苺をザルに入れて水洗い。ヘタを取って鍋に入れ、砂糖を多めに入れて煮込んだ。
「あ、タルル様。コノメノウ様から魔力をもらってきてください。多ければ多いほどたくさん作れますので」
「任せろ──」
やる気満々なタルル様。あとでクヌキ苺で作ったお酒を持っていくとしましょうかね。




