414 凱旋 下
時間を調整して王都に入ると、道沿いに王国の旗が掲げられていた。
そうか。旗を掲げるのもいいわね。それなら鐘も鳴らすのも効果的かもしれないわ。
そんな改善点はあとにして、錫杖タイプのグリムワールを振り梅の花びらを舞い散らした。
前は気紛れでやったけど、こうして吉日の日に舞い散らせるのもインパクトがあっていいわ。来年はもっと花びらを集めておくとしましょうかね。
今回は狐の面をつけ、錫杖タイプのグリムワールを握り、コルディーが関与したことを臭わせておく。
事前に伝えられていたか、報告に出さした聖騎士様方が目立ったのか、道には多くの人たちが集まっており、わたしたちに歓声を上げていた。
まあ、わたしはオマケみたいなもの。目立って欲しいのは世界樹の巫女たちだ。花びらを舞い散らせるのに集中した。
先導してくれる聖騎士様方は、聖騎士団の旗を掲げており、満足気なのがよくわかる。
聖騎士団は重要な存在だけど、戦争や魔物退治がそうあるわけじゃない。出番というものがない。己の武勇を誇ったり示したりすることは少ないでしょう。
この凱旋は聖騎士団の存在を知らしめるためにもってこいのもの。ストイックな者でもなければ自尊心が爆上がりでしょうね。
後ろを振り返えられないので巫女たちの様子はわからないけど、民衆の声で巫女たちが受け入れられていることはわかった。案外、王都の民も渦のことが気になっていたようね。
民衆の声は城門を潜っても聞こえてくる。しばらくはお祭り騒ぎが続くでしょうね。そうなってくれたらわたしの計画も上手くいくから是非とも騒いで欲しいものだわ。
城門を潜ったので、台から降りて狐の面を外した。
「緊張しました」
「ウソをつけ。堂々としていたクセに」
王都に入る前からお酒を断たせていたせいか、禁断症状が出たのでしょう。イライラしているわ。
「ウソではありませんよ。上手くいくか心配してましたからね」
「成功なのか、あれが?」
「改善点はいろいろ見えましたけど、概ね成功と言っていいでしょう。民衆に世界樹の巫女の存在を知らしめることができ、渦の脅威を和らげることができました。これで、異界から聖女を召喚する声も収まるでしょう」
完全になくなったとは断言できないものの、聖女の価値が上がれば声を小さくしざるを得ないわ。民衆の敵となる恐れが出てくるんだからね。
「チェレミー嬢。国王陛下が迎えに立っております」
馬車を守る聖騎士様が声をかけてきた。
角度的に見えないけど、王妃様を連れてきたときと同じならもう到着だ。ベールをかけて停まるのを待った。