411 勝利の行進 上
ハイ。サクッと渦を確保。ガラス製の壺に封印っと。
「……渦も立つ瀬がないな……」
「意思があったら謝罪しておきますよ」
まあ、あったからと言って人権はないのでわたしのために利用するだけですけどね。
「ライルス様。槍の使い方と馬の扱いに慣れた方を三人連れてきてもらえますか? 王都に知らせるための要員としてお願いしたいので」
「了解した」
昨日のことで従順になったライルス様。すぐに三人の聖騎士様を連れてきた。
「槍をお貸しください」
手に持つ槍を貸してもらい、王国の旗と聖騎士団の旗、そして、白地に金糸で世界樹を描いた旗を幻影付与を施した。
「一人は王国の旗を。一人は聖騎士団の旗を。一人は勝利の旗を掲げて国王陛下に報告に上がってください。あと、馬の意匠も代えさせていただきますね」
吉報を届ける使者として派手に、でも実用性を失われない意匠と付与を施した。
「ありがとうございます! 我らにも活躍の機会を与えてくださいり感謝します!」
なんだか喜ばれてしまったけど、本人たちが喜んでいるならなにより。三人の希望を聞きつつ一日かけて準備し、日の出とともに王都に向かってもらった。
「あのままいかせるのか?」
「いい時間に到着できるよう付与を施しました。あとは、聖騎士様方の気力に頼ると致しましょう」
王都まで百キロちょっと。時速八十キロも出せたら余裕でしょうよ。何事もなかったら、だけど。
「では、わたしたちも帰るとしましょうか」
ロセランタ男爵のことは国王陛下から手配してもらうとして、一応、ロセランタ男爵へ挨拶がてら行進の予行練習でもしておきましょうか。
コノメノウ様用の馬車を世界樹の巫女用に改造。渦を封印したガラス製の壺を背後に吊るした。それっぽく見せるために護符でも数枚貼っておきますか。
「その紙、なにか意味があるのか?」
「別にないですね。封印している風を出しているだけです」
「なぜだ?」
「人は仰々しいものほど信じ、ありがたく思うものです。もちろん、ちゃんと真実を見抜く者もいるでしょう。でも、大半は目に見えるものしか信じません。人の意識を変えるにはまずはそういった者から変えていったほうが早いんですよ」
愚かと言えば愚かなんでしょうけど、実際そうなのだから使わせてもらうだけよ。嫌なら真実を見抜く目を持ってください、だ。
「ライルス様。ロセランタ男爵様のところまで勝利の行進をお願いします。民を安心とゴズメ王国の本気度を見せるために」
王国の旗と聖騎士団の旗を馬車に掲げ、ロセランタ男爵様のところに向かって勝利の行進を開始した。




