404 利は我に 下
各大臣との話し合いが終わったのか、国王夫妻が部屋にやってきた。
……ゴズメ王国の国王は自由に動けるものなのね……。
どこかの征夷大将軍はスケジュールにがんじがらめだったと聞いたことあるけど、ゴズメ王国はスケジュールとか簡単にズラせるようだわ。
お茶にしていたので国王夫妻にも出し、ナディアがゴズメ王国の食材で作ったサツリエ(サツマイモ)のタルトをお出しした。
「美味しい。サツリエがこんなに美味しくなるとは思わなかったわ」
「甘味が少ないので砂糖を入れてありますけどね」
元の世界のように品種改良されたものではないのでそこまで甘くはないのよね。帰ったら改良して秋には焼き芋をしたいわ。
「チェレミー嬢。貴女の説明で渦を浄化することはできた──」
「──ただ、納得はされなかった、ですか?」
非礼にも国王陛下の言葉を遮った。
「……そ、そうだ……」
「無理もありませんね。自分たちが信じていたことを否定されたのですから」
そこには各人の思惑や利益があったのでしょうからね。他国の小娘の話などに納得はできないでしょうよ。年寄りなら特に、ね。
「ですけど、それは国王陛下のお仕事です。各大臣を従わせるのは」
「…………」
「と言っても各大臣を従わせるのは難しいでしょうから策を一つ。巫女祭を開いてはどうでしょうか?」
「巫女祭?」
「名前はなんでも構いません。世界樹の巫女が渦を浄化できた祝いとそれを神事にすることです。それも民を巻き込んでの」
世界樹を祭る神事はあるでしょう。民の間でも祭りはあるでしょう。でも、渦を浄化したお祭りはないはずだ。
「神殿は陛下が握っておられるなら大臣たちが口を出すこともできないでしょう。なら、次に渦が出た際は凱旋を行えばよろしいかと思います。もちろん、巫女が渦を浄化できるウワサを民に流すこともお忘れなく」
問題はそれを行う手が国王陛下にあるかどうか。まあ、この感じでは持ってないでしょうね……。
「巫女を二人、我が国へ寄越してくださるのならそのお手伝いをさせていただきますよ」
ちゃんと国王陛下の許可をいただいておかないと国際問題になっちゃうからね。正式な許可をいただいておきましょう。
「……陛下。チェレミー嬢の言葉とおりにしたほうがよろしいかと……」
「わかっている。もはやチェレミー嬢に頼るしかないのだからな」
「お間違いなく。これは、国王陛下の勤めであり、国王陛下の決断でございます。ならば、その結果は国王陛下のもの。わたしは少し、協力させていただいただけ。それ以上でもなければそれ以下でもありませんわ」
すべての因果は国王陛下のもの。わたしはその因果にちょっとだけ関わっただけ。それだけよ。




