388 歓迎会 下
いい昼食だったわ~。
この世界の牛タンもなかなかだった。帰りにお土産としてもらいましょうっと。
歓迎会までやることもないのでゆっくりしていると、コノメノウ様が荷物を漁り始め、碁盤を出した。
……そんなものまで持ってきてたのね……。
コノメノウ様の持ち物は巫女に任せてある。なにを持ってきているかまでは把握してないのよね。
「ジェドですか?」
「ああ。暇潰しにはちょうどよいからな。暇なら付き合え」
わたしはゆっくりしたいんですけど。とは思ったけど、コノメノウ様はいい練習相手。付き合ってあげましょう。
「相変わらず攻めるのが好きですね。いつもの行動は慎重なのに」
「勝負の最中にこちらの心を探ってくるんじゃない」
コノメノウ様は勝負に夢中なようだ。性格ってコントロールするのは大変なようね。
「参りました。日に日に上手くなっていますね」
「そなたは相変わらずのらりくらりと打つヤツだ。まったく手が見えんわ」
「その割りに勝っているではありませんか」
もうコノメノウ様に勝つのは難しくなっている。何百年も生きているのに成長力がハンパないお方よね。
「それはそなたが手を抜いているからだ。初日のときのように本気を出さんか」
「わたしは常に本気ですよ。ただ、勝負を楽しんでいるだけです」
わたしはゲームをするとき勝ちに固執したりはしない。相手を翻弄することを主としている。こう打ったとき、相手はどう返すのかがおもしろいと感じる性格なんですよ。
「お嬢様。そろそろ歓迎会の準備を始めてはどうでしょうか?」
勝負がつくと、ラグラナが間に入ってきた。
「そうね。陽も落ちてきたみたいだしね」
国王陛下や王妃様が出る歓迎会。いつもの服で出席、ってわけにはいかない。ちゃんと体を清めて正装しなくちゃならない。そうなると結構時間がかかるのよ。
「コノメノウ様は出席しますか?」
「そうだな。美味い酒が出るかもしれんからな、出ておくか」
「ゴズメ王国ってお酒が有名なんですか?」
有名だって話は聞いたことないけど。
「蜂蜜酒はゴズメ王国が一番だな。毎年送ってくれているよ」
へー。蜂蜜酒か。ってことは養蜂が盛んなのかしら?
「美味しいならお土産に買っていきましょうか」
甘口の蜂蜜酒なら記憶にあるけど、この世界の蜂蜜酒はどうなのかしらね? アルコール度数が低いなら飲んでみたいわね。
「お湯割りとかどんな感じです?」
「そうだな。まったりしてよいと思うぞ。夜中にこっそり飲むのが格別だ」
神殿ではおおっぴらに飲めなかったんでしょうね。その反動が今にきているわけか……。
「お嬢様。お湯の準備ができました」
「わかったわ。コノメノウ様も体を清めてください。ちょっと臭いですよ」
洗ってない犬の臭いではないけど、アルコール臭いわ。
「失礼な言い方をするな。マミゼル、湯だ」
コノメノウ様も臭いとか言われるのが嫌なんだね……。




