377 マコモ 上
王妃様を治療(?)させてから十日が過ぎた。
食事量も徐々に増やしていき、肉付きも心なしかよくなっているわ。
わたしの朝も通常に戻りつつあり、アマリアに任せていた魔力籠めも参加できるようになったわ。
午前中は王妃様には無理しないよう、興味を持ったリリヤンを編んで大人しくしているそうよ。
お昼になり、ラティアが昼食の用意が整ったことを告げにきて、今日のメニューはなんだろうと考えながら食堂にくると、珍しくコウメノウ様とタルル様、そして、ラーダニア様がいた。
「どうしました? 一斉に集まったりして?」
「この三人で少し出かけてこようと思ってな」
とはタルル様。三人ってのはスルーさせていただきます。
「また変な魔物を狩ってこないでくださいよ」
とはコノメノウ様を見て言いました。ここは冒険者ギルドじゃないんだから魔物なんて持ってこないでください。
「いつも変な魔物を狩ってくるみたいに言うな」
いつもではないけど、変な魔物を狩ってくるのは本当のことじゃないですか。まさか猫みたいにネズミを飼い主に狩ってくるみたいな理由じゃないですよね?
「そなた、変なことを考えておるだろう?」
勘のいい守護聖獣様はお嫌いですわ。
「出かけるのは構いませんけど、ラーダニア様に迷惑をかけないでくださいよ」
猛獣使いじゃないんだから、って言葉は飲み込んでおきます。
「わかっとる。ラーダニアには案内をお願いするだけだ」
「そうしてください。で、どこに出かけるのです?」
「マコモを採りにいってくる」
「マコモ? なんです?」
初めて聞く言葉ね。
「茸だ。この大陸では生えていないと思ったんだが、ゴズメ王国のカルギラス山脈に生っているそうなのだ」
「珍しい茸だとは察せれますけど、美味しいものなんですか?」
「美味いぞ。焼いてよし。煮てよし。生は……さすがに食えんが、わたしは焼いたのが好きだ。清酒とよく合うだろうよ」
松茸みたいなものかしら? わたし、松茸食べたことないから美味しいかどうかは知らないけど。
「それなら火鉢、持ってくるんでしたね」
「うむ。確かに火鉢は必要だな。わたしらが帰るまで用意しておいてくれ。もちろん、清酒を忘れるなよ」
「帰ったら魔力をいただきますからね」
米が貴重でご飯に使うから創造の壺で創るしかない。飲むなら自らの魔力と等価交換です。
「わかっておる。いくらでも使うがいい──いや、八割だけだぞ。そなたは容赦ないからな」
「死なないていどには優しくしてますよ」
さすがに守護聖獣様を殺したら国家反逆罪になってしまうわ。
「……そなたのそういうところが怖いよ……」
失礼な。こんなに優しくしているのに。プンプン!




