370 王妃 下
わたしたちも明日のために休むことにした。
誰が使ってたん? ってくらい館は広く、部屋数もあるので新しく用意してもらった部屋で休んだ。
この館にきて使っていたベッドなので、布団に入ればお休み三秒。意識が戻ったときはいつも起きる時間となっていた。
「おはようございます、お嬢様」
先に休ませたラティアに起こされ、身支度を整えた。
「やっぱり部屋が変わると落ち着かないわね」
わたしは自分の部屋は自分色に染めないと安心できない性格なのよ。
「ラティア。王妃様がいる間はここをわたしの部屋とするわ。元の部屋から少しずつ移動させておいて」
王妃様が眠っている間はできなくとも、回復したら部屋を出ることもある。そのときに移動させてもらいましょう。
「畏まりました」
ウォーキングはしないので、そのまま食堂に向かった。
いつも朝食は七時半くらいだったので、時間までは白湯を飲み、精神を落ち着かせた。
「チェレミー様。少し早いですが、朝食になさいますか。もう出せますが」
厨房からガイルが出てきた。いつでも食べれるように準備していたみたいね。
「ありがとう。帰ったら特別手当を出すからね」
一応、わたしのところでは主張費は出すようにしてある。細かい数字はマクライに任せているけど、結構な金額にはなるんじゃないかしらね。
……貴族は人件費で死ぬって言葉があるけど本当ね……。
「王妃様の侍女は食事をしたかしら?」
ラグラナが食堂にきたので尋ねてみた。
「はい。夜中に食べさせました。休んだ侍女も起きてきたので一般食堂で食べさせています」
ここは、わたしが使う食堂ね。ちなみにコノメノウ様は自分の部屋で。タルル様はどこかで食べているわ。一人の食事は寂しいものね……。
朝食を食べたら食休み。食堂から出ると、ハーマイや館のメイドが揃っていた。
「なにかと忙しくなると思うけど、よろしくお願いするね」
「はい。お任せくださいませ」
ハーマイや館のメイドたちが一斉に跪いた。
「……あなた達、いえ、なんでもないわ」
口から出そうになった言葉を飲み込んだ。
なにかハーマイたちに違和感があったのはこのせいだったのね。この人たち、ラグラナみたいな立場のメイドだったってことか。うちの国だけかと思ったらこの世界の文化みたいなものなのかしら?
ハァー。なんだか王国の闇を見ているかのよう──いや、その闇の真っ只中にいるんだったわね。まったく、気の緩まることがないわね。わたしはただおっぱいに囲まれたスローライフを送りたいだけなのに……。
「王妃様の部屋にいきます」
さて。どのくらい回復したかしらね?




