336 鑑定 下
比較的通りやすいところを歩くと、すぐに食べられるというキノコをラーダニア様が見つけた。
見た目は舞茸かしら? そんなに食べたものじゃないから確信はないけど、臭いはなんとも言えないわね。天ぷらにしたら美味しいかな?
「名前はあるんですか?」
「ゴズメ王国では耳茸と言われてますね。主に焼いて食べていますね」
この時代では焼くか煮るしかないでしょうね。
ラーダニア様に取ってもらい、モノクルで耳茸を姿を記憶させた。
「これは、毒があったりするものもあったりするのでしょうか?」
何千個に一個毒があるとかだったらもうちょっと違うことして記憶させないと。
「毒があるとは聞いたことがありませんね? そんなに食べるものでもありませんので」
「それなら成分まで調べることはないわね」
「セイブンとは?」
「うーまあ、耳茸を形成するもの、かしらね? 果物を搾ると汁と身に分かれますよね。それって身と汁の二つで構成されているってことになります。汁も水分、味になるものと分かれていきます。そうやって細かく分けていくとたくさんのもので果物は形成されているってことになります。成分とはその細かなものの総称ですかね?」
わたしにはそこまでしか説明できません。間違っていたらごめんなさいだわ。
「なるほど。エネリアみたいなものですね」
エネリアがなんなのかわからないけど、ゴズメ王国にはその概念があるようだわ。
「わたしは、そこまで詳しくないからこれ以上の説明は無理だわ。ただ、耳茸の成分を記録して、その成分が同じなら耳茸だって判断できるように、このモノクルに記録させるんです」
きっと似たようなキノコがあるはず。成分を記録させておけば間違えることもないでしょうよ。
耳茸をモノクルに記録し、拡大して耳茸の表面を見た。
「キノコってこんな感じなのね」
菌糸と胞子ってなんだっけ? と思いながら見ていると、ラーダニア様が顔を押しつけてきた。な、なんです?
「それは小さいものを大きく見せているのですか?」
「え、ええ。メガネと同じですね」
「わたしにも拡大できるものをいただけないでしょうか。拡大鏡って高額でわたしには手に入れられないのです」
拡大鏡とかあるんだ。まあ、モノクルがあるんだから拡大鏡があっても不思議ではないか。
「構いませんよ。モノクルはいくつかありますから」
モノクル──片眼鏡は年配の貴族がよく使っており、結構昔からあるようだ。それでいて眼鏡って普及してない不思議。どうなっているのかしらね?
収納の指輪から予備のモノクルを出し、拡大の付与を施してラーダニア様に渡した。
「拡大と思いながら見ると拡大し、縮小と思うと縮小します。試してみてください。ただ、魔力を使うので気をつけてくださいね」
かなり小さいものを拡大しようとしたら結構魔力を使うのよね。
「ありがとうございます。大事にします」
「壊れたらまた新しいものを渡すので大丈夫ですよ」
強化の付与は施してはいない。貴重なものにして壊れたり失くしたりしたらショックだからね。
「耳茸、結構ありますね。夕食に採っていきましょうか」
舞茸の天ぷら、結構好きだったのよね。試しにやってみるとしましょうか。




