332 モルディング 下
次の日は村まで走ってみた。
道端の梅の木も葉が落ちてきている。
「結構早く葉が落ちていたのね」
元の世界の梅がどうだったか忘れちゃったけど、まだ十月で葉が落ちることはなかったはず。なにもかも元の世界と同じってわけにはいかないのね。
モルチャカに乗ると一時間かかる村も十分くらいで到着してしまうものなのね。これならモルチャカで移動して、別な場所でウォーキングしたほうがいいのかしらね?
村に寄ると帰るのが遅くなるのでスルーし、カエラが見つけたルートを走った。
まあ、これと言って珍しいものがあるわけじゃないけど、モルチャカや馬が走りやすい道だった。わたしが快適に走られるルートのようだわ。
少し高台となった場所で休憩する。
「こんなところにも住んでいる人がいるのね」
確かに道はよかったけど、村からは四、五キロは離れている。魔物が出ても不思議じゃないくらい人気がないわ。
そんなところなのに石を積んで作った家が何軒か建っていたわ。
「ここは炭焼きをするところです」
あー炭焼きか。木がたくさんある山の中に造られるって聞いたことがあるわ。本当だったのね。
「ポカンダ村に入るの?」
「はい。炭はポカンダ村に運ばれるのでポカンダ村マイガ集落と呼ばれています」
集落か。村以下のことはまったく知らなかったわ。
「集落って他にもあるのかしら?」
「はい。正確な数はわかりませんが、ポカンダ村に所属する集落は八つほどあります」
「集落に長はいるの?」
「纏め役はいるようですが、大体は決まってはいないようです。集落はいつの間にかできていたりしますから」
魔物がいる世界で魔物がいる中で暮らすって命懸けよね。
「魔物が出ている情報はあるのかしら?」
「猪と狼はよく出るようですが、凶悪なものは出ていないようです」
それはよかった。ポカンダ村は冒険者は少ないからね。領都からくることもないしね。
「あ、ですが、冬眠前の熊は出る季節ではありますね。毎年、山菜や木の実を採りに山に入る者が襲われるそうです」
この世界でも熊が人を襲ったりするのね。人と獣の共存って難しいものなのね。
「狩りでもしてみましょうか」
山ガールではないけど、山歩きもいいかもね。
「それはいいですね! わたし、狩りがやってみたかったんです!」
なにやらジェンが乗り気だ。貴女、そんなに狩りをやってみたかったの?
「なら、泊まりで狩りに出てみますか」
被害が出ていないのならまだ熊は人前に出てこないってことだ。そう簡単に見つけられないでしょうから二泊三日くらいで計画しましょうかね。
「ジェン。貴女に狩りの計画を任せるわ。やってみなさい」
どうやるかはジェン任せ。計画を立てることも大切だからね。
「はっ! お任せください」




