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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん


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33 こんなこともあろうかと

 マゴットが仕入れてきた品の目録を見ながら倉庫に運ばれた品を確認する。


 命令ばかりでは物の流れや状況が見えなくなるもの。配下に任せるだけじゃなく自分の目で確かめるのも必要なのよ。


「大量に麦を買って怪しまれなかった?」


「怪しまれた。だが、チェレミー様のように見抜いた者はいなかったよ」


「おそらく、帝国と繋がっている商会は見て見ぬ振りをしているんでしょうね」


「帝国と繋がったヤツがいるってのかい!?」


「普通にいるでしょう。こんなこと帝国の商人だけじゃできないわ」


 この国と帝国は仲良くはないが敵対しているわけでもない。利で繋がっているだけでしかないわ。


 なら、お金でこの国の商人を取り込むのは当然の理。やらないほうがどうかしているでしょう。帝国は無欲な集団ではないんだからね。


「……じゃあ、わたしらもそう思われるんじゃないか……?」


「でしょうね。知らない人が見れば」


 知っているかのように売り逃げているんだから関わってないと言っても信じてくれないでしょうね。ましてやマゴットは帝国の商人と接触している。きっとそのことを突いてくるでしょうよ。


「随分と落ち着いているんだな」


「まあ、見越していたからね」


 帝国が仕掛けているとわかったときからそんな未来も予想がついたわ。


「……対策済みかい……」


「うーん。まあ、なんとかなるわよ。あなたはいつもの通り、商売をしていたらいいわ。なにかあればわたしに指示されたと言っておきなさい。それでもダメなら荷物を放り出して逃げなさい。そのときの損害はわたしが補填してあげるから」


 もちろん、そんなことしたヤツから三倍にして返してもらうわ。


「あなたのお友達も麦は買えた?」


「あ、ああ。地方の倉庫を借りてバナリアッテから麦を運び出しているよ」


 バナリアッテのお友達なんだ。行商人にしては顔が広いこと。


「麦はまだ買えそう?」


「まあ、バナリアッテでは豆を買い漁っていて倉庫が不足しているからな、麦を詰めているところに声をかければイケると思うぞ」


 他所から相当な量の豆を集めているようね。バブルって怖いわ。


「そうなればまだ倉庫は必要ね。アルドに急ぐようお願いしないとね」


 休みなく働かして申し訳ないけど、謝罪は報酬で報いましょう。わたしの背後にはお妃様が立ってくれるでしょうからね。


「マゴット。夕食の前にお金の話をしましょうか」


 わたしの部屋に戻り、マクライとモリエを混ぜて報酬の配分や目録の照らし合わせ、次の買いつけの話をした。


「マクライ。館のお金は足りている?」


「はい。今のところは。ただ、これ以上倉庫を増やすとなると足りないかもしれません」


「うーん。それは困ったわね~」


 職人たちの給金を滞らせることは絶対にできない。わたしの信用を落とすわけにはいかないからね。


「仕方がないわね。叔父様からねだりますか」


 最終手段に取っておきたかったけど、春までにはあと三つは造っておきたい。またそのときに考えたらいいわ。


「マクライ。領都にいくから叔父様に手紙を出してちょうだい。マゴット。あなたもきなさい。叔父様に紹介するから」


 いずれ領都にもいってもらうんだし、叔父様と顔合わせしておくのもいいでしょう。半日の距離だしね。二泊三日でいけばいいでしょう。


「わたしをかい!?」


「あなたはわたしのお抱え商人。当然でしょう」


「お嬢様。お付きは誰を連れていきますか?」


「……そう、ね。ラグラナとラン、勉強のためにマーナを連れていきましょうか」


 マーナはメイドとして才能がある。後学のために領都のメイドを見せておきましょう。ベテランが多いからね。


 ……若い子がいないのは残念だけど……!


 すぐに手紙を書き、すぐに持っていってもらう。


「その日に返事を出すとか、なにか嫌な予感がするわね」


 これは「ナイスタイミング!」的な臭いがする。大問題とか止めてよね……。


「ナジェスが病気?」


 叔父様の子でわたしの従弟。確か十歳になっていたはず。わたしは王都暮らしだったから年に一、二回しか会わない。会ったとしても夕食のとき。面と向かってお話ししたのなんて数えるくらいだわ。


「わたしは医者でもなければ薬師でもないんだけどね」


 まあ、わたしの付与魔法チートならなんとかなるとは思うけど、そう頼られても困るわ。万病を治すとか広まっても困るしね。


 とは言え、従弟を見殺しにできるわけもなし。やるしかないか。


「マクライ。準備はどう?」


「まだかかります」


 そりゃそうだ。三日くらいかかるかな? とか思ってたし。今日の今日とは夢にも思わなかったわ。


「仕方がないわね。わたしとランで先行しましょうか。レオとラナを出してちょうだい」


 一メートル五十センチまで育ったチョコ──じゃなくて、モルチャカ二匹。騎乗できるようにと鞍は作っておいたのよ。


 こんなこともあろうかと作っててよかったわ。がんばってくれた職人たちよ感謝です。


「お嬢様! その格好でいくのですか!?」


 スカートの下に兵士に借りたズボンを穿くと、ローラたちが悲鳴のように叫んだ。


「仕方がないでしょう。服まで間に合わなかったんだから」


 兵士の中に鞍を作れた者がいたから逸って作ってもらったけど、騎乗はもっと先だと思って作ってなかったのよ。針仕事ができるメイドもいないしね。


「明日になさってはどうですか? もう暗くなりますよ」


「問題ないわ」


 ガラスに光る付与を施し、懐中電灯にしたものがある。鞍につければ夜間走行も可能だわ。


「ラグラナたちは明るくなってからきなさい」


 ランの手を借りてレオに跨がった。


「レオ。いきなり遠出だけど、よろしくね」


「グワァ~!」


 うん。いい子いい子と首を撫でてあげた。


「ラナ。ランをよろしくね」


「クワァ~!」


 近くにきて首を擦りつけてきたので撫でてあげた。


「じゃあ、領都までいくわよ!」


 レオの脇腹を軽く蹴って出発した。

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