324 マランダ村 下
一通り見て回ったら村長宅に戻った。
「あら、どうかしましたか?」
珍しく部屋から出ていたコノメノウ様。おしっこですか?
「暇なだけだ」
へー。コノメノウ様でも暇なんて思うことがあるんだ。お酒飲んでいれば人生ハッピーかと思っていたわ。
「コノメノウ様って、趣味とかあるんですか? お酒を飲む以外に?」
「わたしは別に酒を飲むのが趣味なわけではない。神殿にいた頃は飲ませてもらえなかった反動が出ているだけだ」
まあ、あれだけ飲んでいれば神殿の者も止めるでしょうよ。肝臓が死んでないことが不思議でしかないもの。
「いや、反動大きすぎですよ。わたしのところで死んだら剥製にしますからね」
笑顔にして神殿に送りつけますよ。あと、充分生きたとつけ加えておきます。
「簡単に死ねるなら苦労はせん。もう不老に近い体になっておるからな」
「神にでもなる気ですか?」
お酒の神として後世に伝えておきますよ。
「なるか。王国がなくなれば野に還るよ」
「大変な存在になってしまったのですね」
わたしは不老不死など拷問としか思ってない。限りある命だからこそ好きな人生を送りたいと全力を出すもの。ただ生きている人生はつまらないわ。
「やることがないならボードゲームでもしませんか? わたしも暇なので付き合ってください」
いつもの日課も片付けたし、村も見て回った。眠気もないし、夕食までコノメノウ様に付き合ってもらいましょうかね。
「ボードゲーム? なんだ、それは?」
「頭を使った遊びですよ。まあ、そう難しくはありませんが、奥は深いものですね」
「そうだな。そなたに付き合うのもよいだろう」
ってことで、応接室に場所を移し、錬金の壺で碁と碁盤を作った。
「五目並べと言って、縦横左右に自分の石を五つ並べたほうの勝ちです。ちょっとやってみますね」
一人五目並べをやってみせた。
「ふむ。わかった」
そう難しくないのですぐ理解してくれた。
先手はわたしで黒。後手はコノメノウ様は白だ。では、開始。
賢い方とは思っていたけど、予想以上に賢く、視野も広い。碁盤一杯に広がり、なんとかわたしが勝った。
「……負けたか。そなた、強いな」
「それはこちらのセリフです。初心者の打ち方ではありませんでしたよ」
「もう一度だ」
負けたのが悔しいのか、もう一勝負求めてきた。
「はい」
わたしも五目並べは自信がある。初心者に負けるわけにはいかないわ。
「そうだ。お酒を賭けましょうか。わたしが負ければ隠しておいた梅酒をあげます。わたしが勝てばコノメノウ様にウォーキングに付き合ってもらいます」
「梅酒はいくつある?」
「五本です」
「隠し持っているとは思ったが、こすからいヤツだ。もっと隠しているだろう?」
「それはわたしに勝って確かめてください。負けた分だけウォーキングに付き合ってもらいますからね」
「ふん。いいだろう。こてんぱんにしてやる」
「では、勝負」




