299 奥義
細かなルールは設けない。悪い竜騎士が現れたから倒せって言うもの。ルティンラル騎士団もルーアたちにも潰す勢いでやれと言っただけだ。
「ルティンラル騎士団よ! コノメノウ様の言である! 悪しき竜を倒すがよい! 勝利を捧げよ!」
わたしの口上にルティンラル騎士団が吠えた。
体育会系を燃え上がらせるのは簡単だけど、コントロールが効かなくなるのが難点よね。本気と書いてマジと読む化しているわ。
悪い竜騎士──暗黒竜騎士に真っ正面から突っ込むルティンラル騎士団に暗黒竜が口を開いてファイヤーブレスを吐いた。
ファイヤーブレスは幻影ではない。マジモンのファイヤーであり、並みの魔物ならこんがり焼き上がるでしょうよ。
マジでやんなや! とか怒られそうだけど、マジだからこそ見ている者たちにマジであると伝わるものだわ。
騎士団としての戦いをしたことがあるのか、なかなか連携の取れた戦いをする。もっと力押しすると思ったのにな~。
団を四つに分け、守りをする隊、牽制する隊、遠距離攻撃する隊、背後を取ろうとする隊と、いつもどんな訓練をしているかよくわかるというものだわ。
しかし、暗黒竜は飛べるということは予想できなかったのでしょう。空を飛んだ暗黒竜に目を奪われてカエラとマニエラが隙をついて騎士たちを爆発魔法で吹き飛ばしてやった。
「やりすぎではないか?」
と、コノメノウ様の声が耳に届いた。
反射的に振り返るけど、コノメノウ様は観覧席にいた。どうやら魔法で声を飛ばしたようね。今度真似してみましょうっと。
「今さら止まれと言っても止まりませんよ。思うがままにやらせてあげましょう。彼らは本気で王国を守っているのですから」
その本気をコノメノウ様に、民に示しているのだ、止めるほうが彼らに失礼ってものでしょうよ。
「そなたの騎士たちは大丈夫なのか?」
「問題ありません。死なせないだけの付与は施してありますので」
まあ、騎士団の全力を受け止めるのだから魔力は相当量注ぎ込んでいる。これまででコノメノウ様二人分の魔力が吹き飛んだわ。
何人か行動不能になったことで隊列を組み直して再度暗黒竜騎士たちに攻め込んだ。
次は暗黒竜が飛んでも動揺はしない。けど、そうそうやらせるわけにはいかない。とことん追い込むわよ。
次は暗黒騎士が空を飛び、炎の矢を雨のように降らせてやった。
「加減と言うものを知らんのか?」
「始める前に置いてきました」
どこに置いてきちゃったかは忘れちゃいましたけど。
うわっ。炎の矢を斬っちゃう人とかいるよ。バケモノかよ!
「恐れるな! 進め! 我ら王国の剣は折れたりはせぬのだ!」
おー! かんばれー! んじゃ、暗黒竜奥義、暗雲雷!
全方位に向けて雷が放たれた。




