289 命!
面倒な話し合いや説明を二日くらいに分け、マルビオ家の方々には別邸で暮らしに馴染んでもらった。
その間にわたしは会場の設置やらなんやらに動いた。
なんでそんなに忙しくしてんの? とか問われそうだけど、貴族として自由に生きていくには自分の立場を有利な位置に置いておかないといけない。それには、上位者に気に入られることだ。
だからと言ってゴマをすることはしたくないし、上の顔色を心配もしたくない。わたしがわたしらしく、おっぱい大好きっ娘として生きていきたいのよ。
立場を害されず自由に動け、利用されながらも利用できる位置にいる。六十パーセントはわたしが利益を得られるところにいたいのよ。
前世でそれなりに生きた。あれもこれもは得られない。半分以上得られたのなら勝ちだ。だからわたしは六十パーセントのところを狙って生きていこうと思ったのだ。
わたしが一番欲しいものはおっぱいに囲まれた人生だ。前世では得られなかったおっぱいぱい。それを得られるなら面倒事も買って出るわ。
それに、これは経験になる。館に高位貴族がくるようになれば面倒事なんて暇がないでしょう。それらを素早く解決するための知恵や経験は持っていたほうがいい。
まあ、それがスローライフかと問われたら上手く返せないけど、別にスローライフがなにもしなくていいってことはない。自分が自分らしく生きるには手間暇はかかるもの。仕事はなんでも大変と同じで、どう生きたって大変なのよ。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
疲れて休んでいたらラグラナが紅茶を出してくれた。
「ありがとう。大丈夫よ」
ありがたく紅茶を受け取り、気持ちを落ち着かせた。
「……やる必要があるのですか……?」
「必要があるかないかと言えばないほうね」
ここにはゆっくりするためにきたのだからわざわざ忙しくする必要はないわ。まあ、なにもすることなく暇をもて余していたでしょうけどね。
「では、なぜ?」
「将来のため、かしらね?」
「将来、ですか?」
「わたしは嫌なことに時間を使われるのが一番許せないの。回避できることは事前に用意しておきたいのよ」
事前に用意するために時間を取られてんじゃん! とか突っ込まれそうだけど、なにも用意もなく問題が起きたらそれ以上の時間を費やすことになるわ。だったらその半分の時間で済むならやっていたほうがいいじゃないのよ。
「十六の小娘が言っても説得力はないでしょうけど、経験はあったことに越したことはないわ。なにもない人生よりなにかあった人生のほうがより人生を豊かにしてくれる。楽しいと思える人生になると思うのよね」
無難な人生は前世で充分。今生は有り難い人生にしたいものだわ。




