275 肉体祭り
「しかし、騎士団総出でくるとは思いませんでした」
騎士団は移動制限はないと聞いたことあるけど、王国でも名のある騎士団がここまで自由にしていいものなの? 自由すぎない?
「訓練も終わったからな、王都に帰るついでにマルビオ領に寄ったまでさ」
自由だった!
「訓練ばかりでは騎士団は維持できん。こういう楽しみがなければ不満が積もるばかりなのさ」
王国は平和だ。騎士団の意味も薄まる一方でしょう。まあ、たまに魔物退治をしたりするけど、騎士団は他にもある。出番なんて年に一回あるかないか。規律ややる気を維持するのは大変でしょうよ。
「平和の中で武力を維持するのは大変ですね」
「チェレミー嬢のように理解ある者が増えてくれると助かるのだがな」
「平和であることに越したことはありませんけど、だからと言って武力を捨てるなど愚の骨頂。平和であるからこそ備えるべきだとわたしは思います」
下準備は大事。なにかあってからでは遅いのよ。そもそもわたしはこんなこともあろうかと用意しておく主義。なにもないときが本番なのよ。
「チェレミー嬢が上にいてくれると助かるんだがな」
どうやら苦労してそうね。平和ボケが最大の敵だしね。
「わたしは隠遁した身。ですが、騎士団の名を挙げるための策なら密かに教えて差し上げますよ」
「ほぉう。そんな策が? 是非、教えていただきたいものだ」
「ときに、ルティンラル騎士団は総勢何名ですか? 準騎士も混ぜて」
「戦力となるのは六十八名。輸送隊は外した」
さすが騎士団長。わたしの言いたいことを察したようね。
「騎士団長であるラインフォード様や副団長様は外すとして、六十四名を三で割れませんね……まあ、切りのいいところで二十名にしましょう。お二方の側にいるものも必要ですしね」
一チーム五十人くらい欲しいけど、いないんだから二十名にしておきましょう。今回はお祭りでの余興みたいなものだしね。
「なにをするのだ?」
「鍛え上げた肉体をぶつけるお祭りですよ」
「祭り?」
「領主ご夫妻方がくる前にちょっとやってみますか。朝食が終わり次第、わたしくらいの太さでわたしの四倍はある木を伐ってください。あと、枝やとっかかりがないよう削り落としてくださいね」
「城門破りでもしようというのか?」
「ふふ。もっと知恵を使ったものですよ」
勝負はやみくもにやっても勝てないもの。頭を使って勝つものよ。
「どういうものか教えるためのものですし、二隊に分けてください。ラインフォード様も参加して構いませんよ。怪我をしてもすぐ治して差し上げますから」
メイベルたちが怪訝な目を向けてくるけど、わたしは気にせず朝食を続けた。




