274 事業計画
リンがすぐに入ってきて、ウォーキング用の服に着替えさせてもらった。
「メイベル、起きないわね」
結構、物音を立てているのにまだ熟睡しているわ。
「申し訳ありません。お嬢様は目覚めが悪いもので……」
うお! マリーヌ、いたんかい! 全然気がつかなかったわ! お付き侍女って特殊能力がないと勤まらないのかしらね?
「そう言えば、うちのラグラナ、どうしているかしら?」
最近、まったく見てないわね。まだ城から帰ってないの?
「物資補給に手間取っていると聞いております」
「まあ、他領だしね、仕方がないわね」
マルビオ家が協力してくれているでしょうけど、勝手が違うのだから手間取るのも仕方がないでしょうよ。
ラグラナなら問題ないでしょうから、ウォーキングに出かけた。
「人の往来がさらに増えたわね」
牧場に町でもあるのかってくらい人の往来があり、商人の馬車まで走っているわ。
うん。お前が原因な! とかの声は聞こえません。原因ではなく仕掛人と言ってください。ふふ。計画通りだわ。
「でも、よく許可をもらったわね」
牧場の横に小屋が建てられており、観光地のお土産屋が並んでいるようだわ。採算合うのかしら?
「おはようございます、チェレミー様」
小屋を見ていたら商人風の男性に挨拶された。
「おはよう。ここにお店を出すのかしら?」
「はい。村長に許可を得られましたので」
村長の許可があればいいんだ。まあ、元々マルビオ家でも重要視してなかった場所。村に一任していたってことでしょうね。
「今日、領主ご夫妻や親族の方々が到着するわ。明日辺り視察すると思うからよろしくお願いするわね」
「領主ご夫妻様が! はい、わかりました! 皆に知らせておきます!」
こちらに連絡は入ってないのか。連携がまったく取れてないみたいね。まあ、まだ始まってもいないしね。仕方がないか。
男性がどこかに駆けていき、並ぶ小屋を見て回った。
「たくさんのお金を注ぎ込んできたわね」
宿屋でも建てそうな勢いの建物が造られている。どんな事業計画を立てたのかしらね? 許した人、誰よ?
牧場に目を向ければ騎士様たちが馬に跨がって走らせていた。ん? あれ? 見知らぬ騎士様がいるわね。ま、まさか、ルティンラル騎士団の方? マルビオ領にきたって言うの?
わたしの読みは正しかったようで、騎士団長のラインフォード・ライザード様がいた。マジか!
「チェレミー嬢!」
あちらもわたしに気がついたようで、馬から下りて向かってきた。
「いらっしゃっていたのですね」
「ああ。昨日の夜に。挨拶が遅れて申し訳ない」
「いえ。ちょうどよかったですわ。今日、領主ご夫妻がやってきますので」
ってことを軽く説明した。
「そうか。到着まで身なりを整えんといかんな」
「朝食をしながら領主ご夫妻を迎える話し合いを致しましょう。よろしいでしょうか?」
「わかった。皆に伝えたら向かうとしよう」
「では、別邸で」
ウォーキングを中断して別邸に戻った。




