268 山の宝珠
なんだかんだと大量にアップルシェイクを作る羽目になってしまった。
ハァー。ストックしてあるアイスがなくなっちゃったよ。牛乳の消費が多いのに参っちゃうわ。
「そう言えば、マルビオ領で果物って作ってないの?」
この世界、結構果物ってあるのよね。まあ、甘さは元の世界ほどないけど、スイカやメロンがあったりするよ。王都にいたら簡単に手に入るのに残念だわ。
「葡萄なら作っているんじゃないかしら?」
それは大抵の領地で作っているヤツで、ほとんどワインとなる。あ、アルコールを飛ばしたワインでシェイクを作ればいいのか。
「山にルカスが大量に生っていたぞ」
と、コノメノウ様。そんなに飲むとお腹壊しますよ。
「ルカス、ですか?」
なにそれ? 初耳なんですけど。
「知らんのか? 山の宝珠と呼ばれた果物だ。人の手で作られてはおらんが、山に入れば簡単に手に入るものだ。キャラメルに案内してもらえ。ゴーギャンも好むものだからな」
「この辺にもゴーギャンがいるんですか?」
野生のゴーギャンは狂暴なんでしょう? 別邸に下りてこられたら困るわね。
「ああ。デカいのがいたな。わたしが軽く撫でてやったら腹を見せおったよ」
この方はなにをやっているんだか。お山の大将にでもなる気?
「冒険者に狩られるようなことは止めてくださいよ。冒険者に狙われる守護聖獣とか王国の恥になるんですから」
「……そなた、絶対、わたしをコケにしておるよな……」
「敬意を払われたいならそれに相応しい行動をしてください。巫女、呼びますよ」
そんなに敬われたいのなら巫女に面倒を見てもらうまでだ。
「巫女はいらん」
プイと顔を背けるコノメノウ様。子供か。
「キャラメル。ルカスを探しにいくわよ」
今日はのんびりするつもりだったけど、ルカスが気になる。山の宝珠と呼ばれるくらいならきっと美味しいはず。食べないって選択肢はないわ。
「ラン。用意をお願い。騎乗服で構わないわ」
こんなことなら山に入る服も用意しておくんだったわね。こんなこともあろうかと主義のわたしが情けないわ。
「わたしはいかないからね!」
飲みかけのアップルシェイクを持って逃げ出すメイベル。最初から誘う気はないわよ。
「わたしはいきたいな。構わないか?」
ロンゼ様はいく気満々だわ。
「構いませんよ。山を歩くのに向いた服はお持ちですか?」
「稽古用の服なら持ってきている」
「では、着替えたら玄関に集合しましょう。剣も忘れずに」
わたしも部屋に戻り、騎乗服に着替えた。




