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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん


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244 山賊聖獣 

「さあ、メイベルも食べてみなさい」


 少し冷めたものを渡した。


「……わ、わかったわよ……」


 恐る恐る食べるけど、口にした瞬間に表情を変え、はふはふと一気に食べてしまった。


「どう?」


「……美味しかったわ……」


 伯爵令嬢として美味しいものは食べているでしょうけど、できたての美味しさは知らないはず。スープ以外のものは食卓に出てくる頃には大抵冷めているからね。いや、スープも熱々は出なかったわね。


「ナティー。あとはお願いね」


 村の方々も食べたいって顔をしている。ここで食べさせないと暴動が起きそうだわ。


「畏まりました」


 館には窯があるので、初めてのナティーでも問題なく焼けるでしょう。


「もっと食べたかったわ」


 すっかり魅了されたメイベルがしょぼんとしていた。


「お昼にもっと美味しいのを食べさせてあげるわよ」


 芋は試し焼きに使ったまで。わたしの目的はピザである。が、芋がまだあるので違うものを作ってみますか。横取りする獣もいないしね。


 石もまだ余っているので竈を二つ作って鍋で芋を茹でた。


「貴女って、料理までするのね」


「なかなかさせてもらえないけどね」


 別に料理好きでもなければ得意でもないけど、料理には結構自信がある。前世じゃ自炊派だったしね。炊飯器で作るチーズケーキ、得意だったわ。


 茹で上がったら皮を剥いてボールで潰し、塩、小麦粉を入れてまじぇまじぇ。俵型にして串に刺し、竈に網を置いてじっくり焼いていく。


 みたらしや味噌をつけると美味しいけど、今回はチーズを絡めていただくとしましょう。


「質素な料理ね」


「料理は奥深いものよ。質素に見えても貴族でも食べられない美味しさを見せるものよ。食べてみなさい。あ、熱いから気をつけるのよ」


 わたしも一本つかみ、フーフーさせながらパクっとな。うん。美味しい♥️


「芋を潰して焼いただけなのに、なんでこんなに美味しいのよ?」


 なんで怒った風に言ってんのよ? 美味しいなら笑いなさいよ。


「それが料理ってことよ」


 なんて、素人のわたしが言っても説得力はないけどね!


「──美味そうなものを食っておるな」


 うおっ! びっくりした!


「お、驚かせないでくださいよ。喉に詰まらせるじゃないですか」


 キャラメルの背に跨がったコノメノウ様。金太郎か!


「そなたなら死ぬこともないだろう。寄越せ」


 わたしが食べているのを奪い取ってしまった。山賊か!


「お、美味いな。これは、ビールに合うな」


 出せとばかりに手をくいくいさせる山賊聖獣様。段々と傍若無人になっていっているわね……。


「はいはい、わかりましたよ。食べるなら席について食べてくださいね。人の目があるんですから」


 今さらな気がしないでもないけど、キャラメルに座りながらは行儀が悪い。メイドたちに席を用意させ、そこで食べてもらった。


「まったく。食いしん坊で飲兵衛な方なんだから」


 守護聖獣としての威厳が欠片もなくなっているんだから。ハァー。

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