241 乗馬
ブーブー文句を言うメイベルをお風呂に入れ、メイドにしっかりと洗わせた。
泡に包まれるおっぱいって幻想的よね。大切なところが隠れるのが乙だわ。
「お嬢様。髪を洗いますね」
いつまでも眺めていたいけど、わたしも洗われている身。よそ見は止めておきましょう。背中に当たるラグラナのおっぱいで我慢だわ。
汗を流すだけなので湯船に入ることはせず、体を拭き、髪を乾かしたら朝食とする。
「……今日も草刈りなのね……」
憂鬱とばかりに言葉を漏らすメイベル。この子は引きこもらせたらダメなタイプだわ。
用意を整えて外に出ると、村の方々はとっくに集まっており、朝食を食べていた。
「朝早くからありがとう。しっかり食べて今日もよろしくお願いね」
「はい! こちらこそよろしくお願いします!」
皆さん、やる気全開ね。うん? なにか人が増えているのは気のせいかしら?
「申し訳ありません。このことが近隣の村にも伝わりまして、自分たちもお手伝いしたいとせがまれてしまいました」
「構わないわ。人が多いと作業も捗るしね。ただ、無理強いはダメよ。村の仕事を優先させてくださいね」
「はい。わかりました」
と言うか村長さん。貴方まできて大丈夫なの? 夏は落ち着くと言ってもやることはあるでしょうに。
まあ、人がいるならこちらとしてもやることはある。十人以上増えたみたいだし、牧場の周りの草も刈ってもらいましょう。
指揮は村長に任せ、牧場へ移動した。
「……草刈りしたくないよ……」
イヤイヤ期の子供か。
「仕方がないわね。そんな嫌な顔されたら村の方々に示しがつかないでしょう」
「……草刈りしたくないよ……」
ダメだ。わたしの話を聞いちゃいないよ。
「わかったわ。今日は別なことしましょうか」
「……草刈りしたくないよ……」
壊れた人形みたいになっているわね。どんだけ嫌なのよ。草を刈っているだけじゃないの……。
「草刈りはなし。メイベルって、乗馬できたかしら?」
「……お父様に乗せられたくらいよ……」
よかった。元に戻ったわ。
「じゃあ、今日は騎士様に乗せてもらって馬の感覚を体に身につけなさい。ついでに騎士様から話を聞くといいわ」
騎士様もご令嬢のエスコートを学ぶいい機会でしょう。
牧場に着いたらレイダー様と相談して、騎士様二人と準騎士を三人つけてもらい、カエラとコノハにもついてもらうことにした。
「コノハ。なにかあれば呼び鈴を鳴らしてね。すぐに騎士様に向かってもらうから」
「はい。わかりました」
「騎士様方。メイベルをお願いします」
「お任せください。メイベル様に傷一つつけさせたりは致しません」
まあ、騎士様方も女っ気ないし、護衛でも女性と過ごすのは気晴らしになるでしょうよ。
「メイベル。騎士様方の指示に従うのよ」
「わかっているわ。皆様方、よろしくお願いしますね」
先ほどの壊れた人形はどこへやら。すっかりご令嬢の顔でにこやかに笑っているわ。
……腐っても伯爵令嬢は伯爵令嬢ね……。
騎士様の馬に乗せられ、山道を登っていった。




