202 ビバ
「さすがに目立つわね」
ショートカットせず、街道を進んでいるので、都市部に入ればたくさんの人がこちらを見てきた。
「また盗賊が襲ってこないなら好都合です」
ラグラナは効率的ね。変なウワサが立つほうが問題じゃない。って、今さらだけどさ。
急ぐ旅ではないにしてものんびりもしていられない。明るいうちに進めるだけ進み、道の横に停めて野営することにする。
夜に移動する者なんてそうはいない。迷惑になることもないのだから構わないでしょうよ。
ただ、騎士様たちは驚いているわね。川が近くにあるわけでもない。騎士様たちは馬に跨がっての移動だしね。
野営ありきの移動なので、水と馬のエサはアイテムボックス化させた箱に充分な量を詰め込んでいる。騎士団の一隊が混ざってもびくともしないわ。
「チェレミー嬢。本当にここで野営するのですか?」
ルーアから説明はされたのでしょうけど、とても信じられないようでレイダー様が不安そうに尋ねてきた。
「はい。ここで野営します。これで二回目ですし、あと十回やっても問題ありませんよ。ご心配なら兵士について確認してみてください」
周囲に結界杭を打ち、獣や人を寄せつけないようにする。
そこまで防御力はないけど、結界にぶつかったら弾くくらいの防御力はある。ルーアたちがいるんだからそれで充分だわ。
すべてを皆がやってくれるので、夕食ができるまで川で汲んだ水を使ってブランデーを創った。
付与魔法で一気に創り、小樽に移して急速熟成させる。ビバ、付与魔法。
「こんなものかしらね」
数値化できないので熟成は魔力の籠め具合と感覚で見極めるしかないのよね。あ、仮面に数値化の付与をつければいいのか。帰ったら試してみましょう。
コルクを外して匂いを嗅いでみる。まだアルコールが匂うな。もうちょっとかな。
またコルクをして熟成させる。今度はどうだ?
「うん。いい香り」
まだお酒の良し悪しができてないわたしでもわかるくらい香りがよかった。紅茶に入れたら美味しいかも。
と、横から手が伸びてきて小樽を奪われてしまった。
「コノメノウ様。強奪はいけませんよ」
こんなことをするのは元傾国の美女様。まだご機嫌斜めのようだわ。
「ふん」
子供か。いや、今は幼女型になっているからよく馴染んでいるけどさ。
「まあ、飲みすぎないでくださいよ」
休肝日が終わったのか、コルクを詰める穴から直飲みしている。コップに注ぎなさいよ。
不味いとも美味しいとも言わないけど、コノメノウ様がなにも言わないのは成功ってこと。あの川の水は正解ってことだ。
「次は炭酸水を創ってみましょうか」
アルコール度数が高いものをグビグビ飲める者はそうはいない。食事と一緒に飲めるくらいがちょうどいい。
「錬金の壺でも創りましょうかね」
騎士様にも飲ませてあげましょう。ただで護衛してくれるんだからね。
では、あらよっと。




