200 わたし、美少女だってよ
わたしの顔は丸顔だ。
タヌキ顔、と言うのかしらね? しゅんとした逆三角形の顔じゃない。わたしの美意識ではとても美少女とは思えないわ。だから完全にモブ顔だと思っていた。
「こんな顔が男性受けしたのね」
どんな性癖してんのよ、この世界の男性は? 美女美少女ばかりが溢れている世界でおかしいんじゃないの? なんか変なものがDNAに刻まれてんじゃない?
まあ、人の美醜なんて国や時代で変わるもの。この顔が美しく見える世界ってことなんでしょうよ。
「そうね。チェレミーは綺麗だわ」
人化したミコノトに頬擦りされる。
わたしから見て絶世の美女と言っても大袈裟じゃない。そんなミコノトから綺麗と言われてもね~。まるで心に響かないわ。
「まあ、顔がよくても胸がなければ台無しだけどね」
なんて言ったら馬車の中が張り詰めてしまった。なに?
「お嬢様は今のままで充分お可愛いですよ!」
なぜかラグラナが強く主張する。あなたの場合、小動物を可愛いと言っている気がするわ。
「仮面じゃなくベールのほうがいいかしらね?」
火傷があることを知らしめるために鼻から下は出しているけど、これで美少女とかわかるってことはアゴのラインが重要なのかしら?
そう言えば西洋は口許。東洋は目許が大事とか聞いたことがあるわ。ここも西洋っぽいし、口許が大事にされるのかしらね?
「チェレミーはその仮面がよく似合うわ。尻尾もつけたら?」
「なんのコスプレよ?」
「こすぷれ? なに?」
「なんでもないわ。尻尾なんてつけたらよけい目立つじゃないのよ」
火傷以上に変なウワサが立つわよ。
「……尻尾。お嬢様ならお似合いかも……」
そこ、不穏なこと言わないの。コスプレお嬢様になる気はないわよ。
「可愛いのに」
「可愛いのはあなたよ。尻尾も素敵だしね」
やはり本物は違う。尻尾、ふっさふさーよ。
「コノメノウ様も耳と尻尾を見せてくれたらいいのにね」
幼女型だから結構いけると思う。コノメノウ様も丸顔だしね。
「あの方は傾国の美女と呼ばれたときがあるからしないと思うわ」
「傾国の美女? コノメノウ様、国を傾けたときがあるの?」
そんな話、聞いたことがないわ。是非、詳しく!
──ドン!
と、屋根から凄い音が。コノメノウ様、いないと思ったら屋根に上がっていたのね。
「壊さないでくださいよ」
「どんな強度しているのよ?」
「わたしの大事な人を守る馬車よ。コノメノウ様の攻撃くらい弾き返せないでどうするの? 万の軍勢が押し寄せても無傷よ」
まあ、それは大袈裟だけど、コノメノウ様の一撃や二擊、問題ないわ。
「……コノメノウ様、痛がっているのでは……?」
「生きているって学べていいじゃない」
痛みは生きてる証。たまに思い出すのもいいものだわ。
「──チェレミー様。検分が終わりました」
あら、意外と早かったわね。
ラグラナに視線を向け、馬車のドアを開けてもらった。




