199 なんてこったい
検分の立ち会いはルーアが行い、わたしはメイドたちとお茶の用意をして騎士様たちに渡した。
仕事中に迷惑な、なんて思う男がいるなら見てみたい。きっとBなLの人だわ。メイベルに教えてあげましょう。
王都ならまだしも遠征では女性と接することもない。女旱りの状態だ。そこに王都のメイド以上に美しい女性がいたら色めき立っても無理はないわ。婚約者がいる男でも紅茶を受け取るときデレてたわ。
……まあ、手を出すようならチョン切ってやるけどね……❤️
「ありがとうございます」
ごめんなさいね、渡す相手がわたしで。でも、順番だから許してくださいね。
「王国を守ってくださる方々。せめて一時の憩いを用意させてください」
ルティンラル騎士団なんてなかなか見る機会はない。映像化してメイベルにプレゼントしてあげましょう。あの子、腐女子の気があるから。
「優しいのですね、チェレミー嬢は」
「優しいならこんな顔にはなっておりませんよ。女は計算して動く生き物です。まあ、感情のままに動いた結果がこれですけどね」
フフと笑い、次の騎士様に紅茶を渡した。
「お嬢様。わたしたちがやりますから座っててください。色気を振り撒きすぎです」
色気? わたしが? なにを言っているの、あなたは?
「天然すぎます。お嬢様は綺麗なのですから自覚してください」
「……え? わたし、綺麗だったの……?」
清潔にして美容にも気を使ってたけど、それは人としての身だしなみに気をつけていただけ。自分が綺麗だからとやっていたわけじゃないわ。
それに、わたしは貧乳だ。ラグラナのように立派なものは持っていない。男からしたらなんの魅力もない女でしょうに。わたしが男なら貧乳モブとしか見れないわ。
「お嬢様は綺麗ですよ。それも男性受けする美少女です」
オーマイゴット。わたし、自分への認識が間違っていたようですよ。
「男性の趣味、おかしくない?」
いや、わたしがおかしいの? 前世の価値観が間違っているの? わたしが思っていた美女や美少女は一般的な顔立ちだったってことなの?
「おかしいのはお嬢様です。もっと自分の価値を知ってください」
価値と言われてもね~。
これまでずっと自分はモブ顔だと思ってきた。男性と接することもなかった。いや、接してはきたけど、そんな目で見られた記憶はない。と言うか、わたしの美意識では凡庸な顔立ちにしか見えない。どこが美少女なの? 周りが美女美少女すぎて自分を美少女なんて思えないわよ。
「まあ、この火傷じゃ美少女でも仕方がないわね」
傷物の美少女に需要はない。そもそも美少女だからって嬉しくもない。周りが美女美少女であることのほうが嬉しいわ。
まあ、わたしは、おっぱいがよければ顔なんて問わないんだけどね。おっぱいに顔がついているようなものよ。
「……お嬢様は男性をわかっていません……」
未だに男の心を持っているわたしに男性を知らないとかなんの冗談かしら? わたしほど男性の心を知っている令嬢はいないわ。




