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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん


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191 出発準備を

 いろいろ準備をしていたらマルビオ伯爵に使いを出した者が帰ってきた。


「ご苦労様。しばらく休んでちょうだい」


 マクライが連れてきた者で、出生は謎。経歴も謎。声を聞いたことすらない謎の男性だ。


 伯爵家ともなればこういう存在は何人か抱えているものであり、家令的な立場の者が管理しているのだ。そのために家の資金も管理しているのよ。


 男性が下がったら手紙を読む。要約したら「お出でよ。歓迎するから」ってのことだった。


 メイベルからの手紙も同じで、夏期休暇で戻ってきているそうだ。


 呼び鈴を鳴らし、ローラを呼んだ。


「明後日にマルビオ伯爵領に出発するわ」


 伯爵とメイベルの手紙をローラに渡した。内容を知っておいてちょうだい。


「……別館を一つ用意すると書いてありますが、あちらでメイドを用意してくださるのですか?」


「いえ、こちらで用意するわ。その旨を伝えておいたから」


「畏まりました。では、最初の予定通りで進めます」


「ええ、お願いね」


 ローラが下がると、コノメノウ様が部屋に入ってきた。


「決まったのか?」


「はい。明後日出発します。予定通りです」


「そうか。酒は抜かりないんだな?」


「ありませんよ。これをどうぞ」


 指輪をコノメノウ様に差し出した。


「収納の指輪です。そこにお酒を入れておきました。魔力を籠めれば容量は増えます。もっと持っていきたいのなら入れてください。指輪に触れさせたら収納され、思い浮かべたものが指輪から出ますから」


「そなたの付与魔法はデタラメだな」


 デタラメな魔力を持っている方に言われてもね。と言うか、アル中にならないていどにしてくださいよ。


「まあ、いい。そなたの寝室の棚にある完熟梅酒を少しわけてくれ」


「なぜ知っているんですか?」


 見つからないよう隠蔽してたのに。


「ふふ。酒の匂いを嗅ぎわけられるのが自慢だ」


 うん。まったく自慢になってませんよ。棚に隠しているオヤツを探す卑しん坊ですよ。まったく、メイベルへのお土産にしようと思っていたのに。


「そう酒精は強くないですよ」


 たぶん、七パーセントくらいしかないはずだ。まだ十六歳のメイベルに飲ませるものなんだからね。


「じゃあ、酒精を強くしてくれ」


「……注文の多い方です。わかりました……」


 まあ、二十度くらいにしたものもある。そちらを渡すとしましょう。


「うむ。頼んだぞ」


 満足気に頷いて部屋を出ていった。


 特大のため息を吐いたら席を立ち、残りの準備に取りかかるとする。


「アマリア。手伝ってちょうだい」


「畏まりました」


「留守の間、魔力籠めはお願いね。机は自由に使っていいから」


 今回の旅行にはアマリアは連れていかない。魔族の血が流れているってバレたら大変だからね。そのお詫びと報酬として机を貸してあげましょう。


「はい! お嬢様が帰ってくるまでたくさん籠めておきます!」


「まあ、ほどほどにね」


 部屋を出て寝室に向かった。

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