189 休暇旅行
話し合いが終われば叔父様とナジェスは領都に帰った。
一息つく暇なく次は新しくきた者たちとの顔合わせだ。魔力籠めを半分にして部屋に呼んでもらった。
「若いわね」
お前もな! とか突っ込まれそうだけど、わたしより確実に若い者たちだった。
お母様からの手紙を取り出し、歳が書いてないかを探した。
「……十四歳か……」
読み抜かしたようで、今回きた者の年齢がちゃんと書いてあったわ。次、ローラに読み直してもらいましょう。大事なことを読み抜かす前に。
「ゆっくり休めたかしら?」
「はい。わたしたちのためにありがとうございました」
真っ先に答えたのはハルサ・ライカルだ。
なぜわかるかと言えば胸に名札がついているからよ。きっとローラのアイデアでしょう。名前を覚える時間がないと察してね。
「男爵のご令嬢も学園に通うのではなかったかしら?」
すべての貴族が通うわけじゃないけど、通う資格は持っている。まあ、通うのにもお金はかかるから貧乏な家はいけないでしょうけど。
「はい。我が家は兄を通わせるのが精一杯でした」
他の四人も兄だったり姉だったりが通うために下が諦めたそうだ。
わたしが考える以上に大変みたいね。この国、貴族が多いんじゃないの?
「そう。まあ、学園にいくだけが人生ではないわ。ここでしっかり働いてくれたら嫁ぎ先を紹介もできるし、他を紹介することもできるわ。しっかり働いてちょうだい」
「はい! よろしくお願い致します!」
ハルサはやる気満々ね。なにか目指すものでもあるのかしら?
「ローラ。まずは本館で鍛えてちょうだい。適性を見て正式に配置するわ」
「はい。畏まりました」
顔合わせはこれにて終了。部屋を下がらせた。
「アマリア。お茶をちょうだい」
「はい。お菓子はどうなさいますか?」
「いらないわ。でも、砂糖はたくさん入れてちょうだい」
甘い紅茶を淹れてもらい、一気に飲み干した。
「……のんびりしたいわ……」
のんびりするためにここにきたのに忙しい毎日を送っているとか、笑うに笑えないわ……。
「本格的に始まる前に休暇を取ろうかしら?」
工事の準備と指揮はラルフ様が行う。お金の管理はマクライに任せてある。わたしは、責任者として見守るだけだ。
一月なら離れても問題ないはずだ。
「メイベルのところにお世話になるか」
同じ伯爵家であり、お父様の親友でもある。王都では何度か会って顔見知りでもある。あそこは領主代理を立ててないから領地にいる。あそこは鉱山をいくつか持っているから王都より領地にいるほうが多いのだ。
手紙を書いて早馬で届けてもらうよう手配してもらった。
ここからだと三日かしら? まあ、七日か八日くらいで返事はくるでしょう。その間に馬車を用意するとしましょうか。
手土産も持っていかなくちゃならないし、三台でいいかしら? なんだか出発準備で忙しくなるけど、休暇旅行と思えば楽しいものだわ、
あ、留守の間のことも考えないとダメか。ゆっくりするためにがんばるとしましょうか。




