188 大丈夫ですよ
昼食は四人でいただき、食休みしたら視察へ出かけた。
「ここを城の建設予定地にしようと思います」
今はまだ雑木林で草ぼうぼうだけど、広さや警備を考えたらここしかない。
「問題は水ですね。井戸を何ヶ所か掘って、川の水を引き込んで堀にしようかと思いますが、井戸を掘る職人の手配、お願いできますか?」
「ああ。手配しよう。川の近くだし、問題はなかろう」
「それはよかったです。叔父様。護岸工事もしたいので人を集めてもらえますか? 城から散歩道を造ろうかと思いまして」
「まあ、人は集められるだろうが、金は大丈夫なのか? カルディムにそんな金はないぞ」
「そこは安心してください。王宮から引っ張ってきますから」
「お、おい、チェレミー。王宮からって、大丈夫なのか? いや、お前なら引っ張ってきそうだが、城を建てる予算なんてとんでもない額になるぞ。大丈夫なのか?」
大丈夫が一つ多いですよ。まあ、地方の領主代理では怖くなって仕方がないでしょうけどね。
「大丈夫ですよ。王宮の予算で建てて、王宮に管理してもらい、貸し出し賃をいただきますから」
「いや、お前、強欲にもほどがあるだろう! 王宮が飲むわけないだろう! 損でしかないだろう!」
「損だとは思えない条件を出せばいいだけですよ。安全のためになにかは教えられませんけど」
「どう言うことだ? 危険なことは聞かないが……」
「わたしの予想ではここは高貴な方の別館か秘密の館になるでしょう。そうなれば王宮の侍女が占めるようになります。わたしの手から離れるでしょう。必ず王宮が管理するということになります。ですが、この地はカルディム家の領地。取り上げることはできません。多額のお金を払って借り上げることになります」
そこには口止め料も入っている。カルディム領の税収の倍、いや、三倍は入ってくるでしょう。それだけの価値になるんだからね。
「これは他言無用ですよ。あくまでもわたしの予想。訪れない未来がくるかもしれないんですからね」
わたしは未来視なんて天能はない。あくまでも予想でしかない。外れることだってあるわ。
「完全にそんな未来がくることを前提に動いているよな?」
「そうじゃなかった場合も考えて動いてますよ。未来は不確定要素の積み重ねですからね」
わたしが前提としているのは人の欲であり、思考から考察しているまで。情勢は考慮してない。天変地異なんかが起きたらどうなるかわからないわ。
「カルディム家に害が及ぶことのないよう動きますから安心してください。関係ない立場でいてください。必要経費を省いた利はカルディム家に回しますので」
「……お前の真の目的はなんなのだ……?」
「穏やかな人生ですよ。まあ、大きな夢を叶えようとしたら大きな苦労をしなくてはならない。まったく、人生とはままならないものです」
転生してよくわかったわ。人生はままならいものだってね。




