182 性格もお婆様似
マッサージを受けてしまったので、叔父様たちはとっくに上がっており、マクライから今の状況を聞いていた。
わたしはまだ湯上がりで話に混ざる体調ではないので、落ち着くまでリンゴジュースを飲むことにした。
マクライとは常に状況説明や相談はしているけど、わたしの考えや構想に文句も言わず、理解しようと努めてくれている。家令の鑑と言うべき人物だわ。
ただ、マクライは高齢だ。このままでは次が育たないのが問題よね~。
いずれ城で働く者が引退してくるからしばらくは大丈夫でしょうけど、わたしが三十四十となったときを考えると、今から用意していたほうはいいわね。また孤児院から優秀な子を引き取ってこようかしら?
「大体の状況は理解した。城を築くのもな。だが、カルディム家には手が余るのではないか?」
「ここのことはわたしが責任を持ちます。叔父様はカルディム家から外して対応してください」
「そうは言うが、世間はそう見ないぞ」
「見られなくても表立って口に出す人はいませんよ。精々、陰で言うくらいです」
それは人の性みたいなもの。陰口なんて統制できないわ。言いたいヤツには言わしておけ、よ。どうせ表立って口を出せる者なんていないんだからね。
「立場上、ここはわたしの管轄としておけば叔父様も不当な要求ははね除けられます。ただ、無闇にはね除けても大変でしょうから、相談してみると、わたしに伝えてください。こちらで処理しますから」
まあ、やるのは王宮なんだけどね。わたしはこんなこと言われました~と、報告するだけよ。
「わたしは、もっと静かな暮らしを求めていただけなんですけどね」
楽を求めればさらに沼に沈む感じだわ。
だからと言ってウォシュレットのない生活も嫌だ。あるていどの衛生環境下で暮らすには身分もお金も力も必要だ。田舎でスローライフをと夢見た都会人の末路を送っているわ……。
「どこかに消えることはしないでくれよ」
血と言うのかしらね。叔父様にはお見通しのようだわ。
「それは最終手段にしておきますわ。まだまだやれることはありますからね」
忙しいけど、そう悪い暮らしではない。いや、いい暮らしをしていると言っていいわね。なんたって毎日おっぱいを拝める。この暮らしを知ったらなかなか捨てられないわ。ぶへへ。
「お前のその笑い、母上にそっくりだ」
「あら、わたし、顔も似てたんですか?」
貧乳ばかりじゃなく性格も受け継いだのかしら? わたしは元の人格のままだと思っているんだけど。
「ま、まあ、似ていると言えば似ているな……」
なぜ視線を逸らすんですか? まっすぐわたしを見てくださいよ。
「お婆様、生きているうちにお会いしたかったです」
きっと話が合ったでしょうよ。
「──失礼します。お嬢様。コンポート伯爵様がお会いしたいそうです」
と、ローラがやってきた。
「さすがラルフ様。行動力がおありです」
やはり現場で動いてきた人は普通の貴族とは違う。話が早くて助かるわ。
「叔父様。よろしいですか?」
「服装はこれでいいのか? 部屋着だぞ」
「そんなこと気にする方ではありませんよ。わたしも普段着ですし」
あの方に無駄な装いは必要ない。この館ではいつもの通りで構わないでしょう。
「わ、わかった。お会いしよう」
ってことでラルフ様を部屋に呼んでもらった。




