179 仲のよろしいことで
話が終わればナジェスとレアナの相手だ。
まあ、一泊二日を予定しているのでずっとは相手できないけど、夜はレアナと一緒にベッドに入った。
「ナジェスも大きくなったのね」
成長期とは言え、去年までは少年らしい体つきだったのに、身長はわたしくらいになり、ちょっと筋肉がついてきてたわ。
それに、思春期に入っちゃったようで、一緒に寝るのも恥ずかしがっていたっけ。
「お兄様、剣の稽古を始めたんですよ」
「そっか。男の子は剣を覚えなくちゃいけないんだったわね」
学園に入るまで剣を覚えなくちゃならないとかお兄様も言ってたわ。本格的なものじゃないけど、あるていどの技量は求められるそうよ。得て不得手があるのに大変よね。
「お嬢様方。もうお休みください」
おしゃべりしてたらメアリアに注意されてしまった。
「ふふ。お休みなさい」
レアナのおでこにキスをして眠りについた。
しばらくしてレアナが眠りについたらベッドから抜け出し、ガウンを羽織って部屋を出た。
時刻は八時。子供は眠る時間だけど、大人はまだ眠るには早い。叔父様たちと話の続きをすることにする。
メアリアに案内されて談話室に向かうと、叔父様や叔母様、執事のマルセオがいた。
「すまんな。移動で疲れているのに」
「大丈夫ですよ。毎日歩いて体力を身につけているので」
いつも十時くらいにはベッドに入っている。まだ全然余裕だわ。
「お嬢様。なにか飲みますか?」
「紅茶をお願い。ブランデーを入れて飲むわ。目が覚めすぎると眠れなくなっちゃうからね」
お酒臭くなるほどは飲まないわ。ほんのちょっとよ。
「紅茶にブランデーを入れるのか?」
「はい。寝る前に飲むと落ち着けますよ」
眠れぬ夜によくやっているわ。あ、元の世界では未成年がやっちゃダメよ。二十歳過ぎてからね。
「わたしもいただこうかしら? 最近、眠りにつくのに時間がかかるのよね」
「それは体の血流がよくないのかもしれませんね。メイドを寄越していただければマッサージを教えますよ」
館のメイドはわたし個人で雇っているから寄越せないのよ。
メアリアが淹れてくれた紅茶に甘くしたブランデーを少し入れてもらい、二人に飲んでもらった。
「美味しいわね」
「わたしにはちょっと甘すぎるな」
「これは紅茶に入れる用に作ったものですからね。叔父様ならウイスキーのほうがよろしいかと思いますよ」
「おー。確かに合いそうだ。メアリア。新しいのを淹れてくれ」
部屋を飛び出し、コレクションからウイスキーを持って戻ってきた。
「あまり飲みすぎないでください。明日、でかけるんですから」
そう急ぐ必要はないと思うのだけれど、叔父様は明日、挨拶にいくことにしたのよね。
「わかっている。一杯だけだ」
紅茶にウイスキーを入れて、味わうように口に含み、ゆっくりと飲み込んだ。
「……うむ。いいな。明日から寝る前に飲むとしよう」
「ほどほどにですからね」
「わかっている。大事なウイスキーなんだからな」
なんとも仲のよろしいことで。
そう長いこと会話もできないだろうと、ブランデー入り紅茶を飲み干した。




