178 タルディタナ家
ウォーキングから帰ってきたら領都に向かう準備をする。
さすがに城を建てるとなると叔父様に話を通さないといけないでしょう。まあ、本当ならお父様にきて欲しいところだけど、お父様は指輪事業が忙しそうで、こちらにこれないとのことだったわ。
今回は一泊二日を予定しているので、護衛はルーアとカエラ、ランにコノハ、あと、モコモコ狐になったミコノトだ。
わたしはレオに跨がり、ランはラナに。コノハはローだ。ルーアとカエラは自分の愛馬です。
荷物はそれぞれに渡した収納の指輪に入れてるので手ぶらだ。朝食を終えて少し休んだら出発だ。
半日の距離なので、夕方の三時くらいには到着できた。
知らせは出していたので、ナジェスやレアナ、城の者が温かく迎えてくれた。
嬉しそうな二人を宥めながら城に入り、汗を流してから叔父様と叔母様に挨拶をする。
「ラルフ・コンポート伯爵か。学園時代から風変わりな方だったな」
叔父様の二歳上で、学園で見たことあるそうよ。
「お話したことはあるんですか?」
「ないな。あちらは上の学年だし、学園にあまりこなかった方でもあるからな」
まあ、なんとなく想像はできるわね。あの性格なら。
「挨拶にきますか? ラルフ様の性格からこなくとも気になさらないでしょうし」
「いや、挨拶にいく。いかざるを得ないだろう。爵位のある方だ。他者から挨拶にもいけない領主代理と思われても困るからな」
確かに周りの目を考えなかったわね。どこに目があるかわからないし。
わたしが言われるなら構わないけど、カルディム家が悪く言われたら困るわ。ちゃんと挨拶する場を整えなくちゃいけないわね。
「しかし、あんな場所に城など建てたら大騒ぎになるのではないか?」
「大騒ぎにはならないですよ。高貴な方が黙らせるでしょうからね」
ウワサとして広がるでしょうけど、世間を騒がすほどにはならないわ。なにかあれば王宮が黙らすでしょうよ。
「ハァー。カルディム家はそこまでの家ではないんだがな」
「叔父様はお爺様とお婆様の記憶はありますか?」
確か、お爺様とお婆様が死んだのは十五、六年前。わたしが産まれる前と聞いているわ。
「もちろんだ。父上はカルディム家の人間と言った方で、母上はチェレミーに似ているな。性格はまったく似てないがな……」
カルディム家の血ではなく、お婆様の家系の血になにかあるみたいね。
「お婆様の家とは今でも繋がりはあるんですか?」
「うーん。タルディタナ家は王都に居を構えた伯爵家だからな、兄上が繋がっているはずだ」
叔父様は領地を任されており、カルディム家として動いているのはお父様。大切なことは叔父様にも伝えるでしょうけど、細かいことまでは伝えたりしないわ。領地に帰ってくるなんて年に一回か二回くらい。去年なんて忙しくて戻ってもこなかったわ。
「母上が気になるのか?」
「そうですね。ローラがわたしはお婆様に似ていると言うのでちょっと……」
領地にいてはタルディタナ家のことはわからないわね。
「は、母上はとても器量のある方で誰からも愛された人だ。見た目など細やかなことだ」
「そうよ。お義母様はお義母様。チェレミーはチェレミーよ」
なんだか慰められているけど、わたしはタルディタナ家のことを知りたいだけで、お婆様に似ていることなんか気にしてないわよ。
と言うか、そんな慰めを受けたらわたしが貧乳であることを気にしているように見えるじゃないのよ。
「わたしはカルディム家の血が濃いですから気にしていませんよ」
「そ、そうだな。チェレミーはカルディム家の血が濃いな……」
「ええ、そうね。チェレミーはカルディム家の血が濃いわね……」
それをわたしの目を見て言って欲しいんですけど。全力でタルディタナ家の血のほうが濃いと言っているようなもんじゃないですか。
まあ、なんにせよ。王宮が気にしているのはタルディタナ家と言うことはわかったわ。




