177 隔世遺伝
「……お嬢様。どうかなさいましたか……?」
姿見に映る自分を見詰めていたら、おずおずと言った感じでマーナが声をかけてきた。
「マーナは何歳になったかしら?」
「え? あ、はい。十五になりました」
そうよね。わたしの一歳下ってことは覚えているわ。けど、この一年で見た目は三年くらい過ぎている。胸なんてCからDに時速百キロで通りすぎていったわ。
「前々から感じてはいたけど、わたし、育ってなくない?」
思わず「なくない?」とか言ってしまったわ。
「え? あ、そんなことはないかと。初めてお会いしたときより成長なさっていますよっ!」
うん。そんなことあるって動揺ね。ちょっと落ち着きなさいよ。
「わたし、本当に呪われているのかしら?」
王都にいたときよりちゃんとしたものを食べているし、ウォーキングも大雨の日以外は続けている。規則正しい生活をしているのになぜ育たないのかしら? もう呪われているとしか思えないわ。
……ちゃんと呪い返しの指輪を嵌めているのに、どんだけの呪いをかけてきているのかしらね……?
「それともわたし、養子だった?」
お父様にもお母様にも似てない。ナジェスやレアナにも似てないわ。
「お嬢様はカルディム家の血筋です」
と、いつの間にかローラが現れていた。マジで?
「お嬢様が奥様から産まれたのをわたしは見ています」
さすがに産まれたときの記憶はないけど、前の自我が目覚めたときからローラはいたっけね。
「じゃあ、やっぱり呪いかしらね?」
いや、血かしら? カルディム家にはなにか王宮に見張られるなにかがあるっぽいしね。
「呪いではありません。お嬢様は大奥様にそっくりですよ」
「大奥様と言うと、お婆様のこと?」
伯爵家なら肖像画の一枚でもありそうなのに、お爺様のもないのよね。なにか残しちゃいけない理由があるのかしら?
「はい。大奥様もお嬢様とそっくりでした」
「胸もなかったの?」
「……はい……」
言い難そうに肯定だけするローラ。
「わたしよりあったのね」
「…………」
沈黙は肯定と同義よ。
「そう。わたしは先祖返りしているのね」
ある意味、遺伝子と言う呪いにかかっているものね。それなら、なにをやっても無駄と言うことか。もうちょっと身長は欲しかったわ。
ちなみにわたしは百五十センチちょい。他のご令嬢からしたらかなり小さいほうでしょうね。
「まあ、小さいなら小さいなりに生きていくしかないわね」
周りからのイメージも強く残る。それはそれで有利に働くわ。この体をよしとしましょうか。
「さあ、ウォーキングにいきましょうか」
小さくとも体は鍛えていたほうがいい。健康的に生きるためにもね。




