171 ブランド力
とまあ、護衛騎士団の創設は皆に受け入れられたけど、さすがにルーアに丸投げは暴挙でしかない。護衛騎士団の運用や体制の基礎を教えた。
「なるほど。確かに人数がいないと護衛はできませんね」
「ええ。予備も欲しいから最低限でも四十人は欲しいわ。ただ、それだけの人員を確保できるからね。女性が騎士を目指すなんて少数派ですからね」
ルーアたちもその少数派であり、伝手を頼っても四人しか集められなかったしね。
「本当に知り合いを呼んでも構わないのですか? 腕前はお世辞にもよいとは言えませんが……」
「そこは訓練とわたしの魔法で底上げするわ。この際だから装備も統一しましょうか。高貴な方を守る護衛だと知らしめるために」
護衛は受け手。襲撃者の注目を浴びながら護衛対象者の壁にならなくてはいけない。護衛対象者の命を優先するのが仕事なのよ。
「護衛は派手な見た目だけど、やることは地味な仕事。派手な戦いも見せ場もない。護衛対象者を守って当たり前。賞賛はなく、護衛対象者を守れなかったら非難される。影の存在だわ」
ほんと、損な存在よね。
「でも、誰が賞賛しなくとも、世に知られなくとも、わたしはあなたちを賞賛し、あなたたちが守ってくれることを知っている。なにより、あなたたちがいるからわたしは命の心配をせず、わたしはわたしのやるべきことに集中できる。あなたたちはわたしをわたしたらしめる誇りだわ」
やり甲斐搾取、とまではいかないけど、護衛なんてやり甲斐や誇りがないとやってられないでしょうよ。なら、護衛対象者としてそのやり甲斐と誇りを最上級に持ち上げてやることが役目というものだわ。
「……チェレミー様……」
「だからって命を粗末にすることはわたしが許さないわ。わたしを守り、自分の命も守る。これは命令よ。破ることは許さないわ」
わたしが目指すところは鉄壁。何人たりとも近づかせない。そのブランド力が信頼を呼ぶのよ。
「はっ! その命令、必ず守ってみせます!」
うん。だからその敬礼止めなさい。いや、広めたわたしが言うなって話だけどさ……。
「それはなにより。それで、護衛騎士になりたい者を知っているの?」
「はい。騎士爵出の娘がいます。跡継ぎがおらず、娘を代わりに騎士として育てている家が結構あります」
「婿養子とかしないの? 次男や三男がいるでしょうに」
それが手っ取り早いでしょう。と言うか、そういうの、多いの?
「あまり人気がありません。騎士も実力や実績が物を言います。能力がある者は取り合いです。騎士も家を残せるのは一握りです」
男爵も大変だけど、騎士爵もかなり大変みたいね。入れ替わりが激しいから騎士爵や男爵ってすぐなれるのね。
「そういうものなのね。もし、結婚して家を残したいならわたしに言いなさい。伝手を使って見つけてあげるから」
伯爵令嬢の声なら多少なりとも箔はつくでしょうし、護衛騎士団上がりなら婿養子も取りやすくなるでしょうよ。婿養子になった者は肩身が狭くなるでしょうけど、うちで雇えばそこまで家庭での立場は悪くならないでしょうよ。
「年齢的に難しいのでは?」
「わたしの魔法なら四十歳でも元気な子供を産ませてあげられるわ。退職金も子供が成人するまで問題ないくらい渡すわよ」
退職しても保障することを示せばがんばって働いてくれるでしょうよ。
「ふふ。至れり尽くせりですね」
「それがわたしの命の値段よ。少しも安くないわ」
わたしは、おっぱいに囲まれたスローライフを送るためなら出し惜しみしないわ。お金よりおっぱいだわ!
「そのときはよろしくお願い致します」
ルーアも結婚して子供を産みたいみたいね。そういうの、興味ないのかと思っていたわ。ほんと、人の心ってわからないものね。
「ええ。任せなさい」
約束は絶対に履行してあげるわ。
 




