163 手玉に取る
「よろしいのですか?」
マニエリ嬢の巨乳がどんなかを妄想したらラグラナがなにか言ってきた。
「ん? なにが?」
ごめんなさい。聞いてなかったわ。
「マニエリ嬢です。とても働きにきた目ではありませんでしたよ」
「まあ、わたしの監視と情報収集でしょうね。特に問題はないわ」
あの巨乳は大問題だけどね。調べる必要があるわ。どうやってお風呂に誘おうかしら? それが超問題だわ。
「いや、問題ありますよね」
「どんな問題があるの? わたし、隠すことなんてなにもないわよ」
おっぱい聖人ってことを隠してんじゃん。なんて言わないの。わたしは、自己主張してないだけよ。訊かれたら正直に話すわ。あなたのおっぱいを狙っているのよ~ってね。
「謎ばかりですよ、お嬢様は」
「悲しいこと言うわね。あなたが一番わたしの側にいたのに」
ぷんぷん。
「近くで見ていてもお嬢様を理解なんてできませんよ。わたしの目すら欺くのですから」
「あなたの悪いところよ。会話の節々に自分の能力を誇り、その周りを補完するための情報を教えてくるの。あなたたちは絶対的に人を知らなすぎる。まだ帝国の草のほうが脅威だわ」
人が恐れるのは人。ただ、上の命令に従うだけの人形など怖くもない。誤情報を与えるくらい簡単だわ。
「でも、最近のあなたは人間らしくなっているから好きよ」
メイド頭マレアだった頃はより人形っぽかった。決まったことを決まった通りにしか動けない。気味が悪いったらありゃしないわ。
「人間らしい、ですか、わたし?」
「前より人間らしくなった、ってことよ。やはり艱難辛苦を与えると人は人の心が宿るものなのね」
「それだと、お嬢様が原因となってますよ」
「文句ならあなたの上司に言うか、別の者と交換してもらいなさい。わたしはわたしの思うままに生きるだけよ」
今生はわたしらしく、スローライフをしながらおっぱいを求めていくと決めた。いや、忙しいよね。とかの突っ込みは聞きません。人生とは艱難辛苦の繰り返し。その中で自分らしく、自分のペースで生きるようにしていくのがスローライフなのよ。なにも起きない人生などクソでしかないわ。
「これは捨てておいて」
紹介状をラグラナに渡した。
「返さなくてよろしいのですか?」
「いいのよ。それは囮だから」
こんなこともあろうと、紹介状を渡した者には欲しがる者に応じて偽の紹介状を渡すように指示しておいたのよ。
「この紹介状は、海産物を扱っている商会のもの。ダーオン商会がどの商会と繋がりがあるか、どう接触してきたかがわかる。バナリアッテの状況が見えてくるわ」
マゴットには知り合いを通していろんな分野の商会に紹介状を渡すよう指示を出した。こちらの思惑を見抜いたなら、それはバナリアッテが帝国に支配されている証拠だわ。
「これで王宮も調べやすくなったでしょう?」
わたしにわかるのは表層だけ。あとは、王宮にがんばっていただきましょう。
「王宮を手玉に取りますか」
「王宮もわたしを手玉に取ればいいのよ」
できるなら喜んで踊ってあげるわよ。




