159 ウェルカム
いろいろあったけど、無事五日目を迎えた。
五日目であると同時に視察が終わる日であり、帰る日でもある。
朝食を終えたらご婦人方を集め、出発の時間まで皆さんと挨拶を交わす。あと、館の感想も聞かせてもらった。
馬車の用意が整った報告を受け、荷物を馬車に積み込み始める。
「馬車や旅行する鞄も考えないといけないわね」
きたときは思わなかったけど、この時代って衣装箱に入れて馬車の屋根に載せて運ぶのよね。
貴族なら荷物専用の馬車があるけど、庶民の移動は籠に入れるか背嚢的なものに入れている。そもそも都市間を移動すること自体少ない。辻馬車的なものも何日に一回の運行みたいよ。
「チェレミー。お世話になったわね」
「いえいえ。またきてください」
皆が馬車に乗り込み、最後に叔母と挨拶を交わした。
なんの問題なく予定通り出発。一応、兵士に護衛としてついてってもらった。
馬車が見えなくなるまで見送り、戻ってくることがないのを確認したら長いため息を吐いた。
「……疲れたわ……」
玄関の外にある長椅子に腰かけた。安心したら気が抜けちゃったわ。
「お嬢様も人並みに気疲れするんですね」
なかなか失礼なことを言うラグラナ。わたしは結構繊細な性格しているんだからね。鼻で笑われそうだから口にしないけどさ。
「疲れもするわよ。たくさんの審査員に見られていたんだからね」
わたしに舞台俳優とか絶対に無理ね。都合よく演じられないわ。
「……気づいていらっしゃいましたか……」
「まーね」
ラグラナは王宮が忍び込ませた者が一人とは言ってない、まあ、そもそもこの館で働くメイドの三割は王宮から派遣されているようなもの。今回のことは漏れなく報告されるでしょう。
そんな状況下で王宮ばかりか他の勢力の目も誤魔化さなくちゃならない。心休まるのはおっぱいをバインバインしているときくらいだったわ。
「お嬢様は、誰も信じてないのですか?」
「信じているわよ。メイドたちの能力は、ね」
心の中でなにを思おうとわたしは関知しない。それぞれの立場があり、思いがあるからね。仕事をちゃんとやってくれるなら心の中で罵倒されても気にしないわ。
「王宮から派遣されたメイドはわかりやすいのよ。わたしの懐に入りたいのならもっとわたしのことを知ることね」
おっぱいを好きなときにバインバインさせてくれるならわたしのほうから懐に入っちゃうわよ(ルパンダイブで)。なんならペロペロだってしちゃうんだから。
「ローラ。紅茶をお願い」
王宮から派遣された一人でもあるローラにお願いした。
「いつからわかっていたのですか?」
「最初からよ。ただ、なぜカルディム家にいるのかはわからないわ。うち、そんなに警戒される家なの?」
生憎、家伝みたいな書物はなく、お爺様お婆様は亡くなっていて、カルディム家の歴史を探れないのよね。
「わかりません。わたしたちには教えられておりませんので」
まあ、ラグラナたちは監視が目的。その理由までは教えられないか。
「排除しますか?」
そうはっきり言うところ、わたしの懐に入っている証拠よね。
「わたしは仕事をしっかりしてくれるのなら心の中まで問わないわ。好きなだけ暗躍しなさい」
そして、巨乳メイドをどんどん送り込んでくるといいわ。わたしはいつでもウェルカムよ。
「……お嬢様の豪胆には呆れますね……」
「わたし、結構繊細なほうよ」
慎ましやかに抗議してみるが、ここにいるメイドたちは黙ってしまった。
うん。あなたたちがわたしをどう思っているかよくわかったわ。
ローラが持ってきてくれた紅茶を飲み、青い空を眺めた。




