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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん


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153 ままどおる(スペイン語)

 三日目。ウォーキングしようと玄関まできたらご婦人方が集まっていた。


 全員でないにしろ、十五人くらいは集まっているわ。


「おはようございます。皆様もウォーキングですか?」 


 二班を任せているマルヤー婦人がいたので尋ねてみた。


 マルヤー婦人は叔母様の右腕のような方で、現兵士長の妻でもある。お母様とは幼馴染みの仲でもあるので、婦人会では事実上のトップにいるわ。


 わたしとお兄様と同じ娘さんとわたしと同じ歳の息子さんがいたりするわ。


 息子さんとは会ったことはないけど、娘さんとは城のメイドとして叔母様についているのよね。


「ええ。わたしもチェレミー様に習おうと思いましてね」


 付き合い的に親戚のおばさんみたいなので口調は柔らかく、そこまで畏まっていないのよ。


「歩くことは大切ですよ。美容にもいいですしね」


「あなたでも綺麗でいたいと思うのね」


 火傷に目をやるマルヤー婦人。親戚のおばさんみたいな人なので、あからさまな気遣いはしない。ズバッと言ってくれる人でもあるのよね。まあ、わたしとしてはそういう性格は好ましいと思うわ。


「火傷はわたしの戒めで残しておりますけど、一人の女として綺麗でありたいとは思っていますよ。顔に火傷があって汚いとか救いようがありませんよ」


 わたしもズバッと言う方にはズバッと返す。そのほうが話が早いし、いい関係を結べるからね。


「まったく、誰に似たのかしらね?」


 そうね。誰に似たのかしら? 前世でも同じこと言われたけど、誰にも似た親族はいなかったわ。


「きっと取り換えられたのかもしれませんね。お父様にもお母様にも似てませんし」


 見た目も両親に似てない凡庸な顔立ちだし、胸も貧乳だ。取り換えられたのなら納得だわ。


「あなたは、間違いなくマレティーナから産まれたわよ」


 マレティーナとはわたしの母親の名前ね。


「ふふ。冗談ですよ。わたしは、チェレミー・カルディム。カルディム家の女ですよ」


 さすがに産まれたときの記憶はないけど、お母様のおっぱいをチューチューしていた記憶はある。ママの味だったわ。


「そう言うところはマレティーナに似ているわ」


 へー。そうなんだ。お母様にそんなところがあったのね。


「さあ、皆様。軽く柔軟体操をしてウォーキングに出かけますよ」


 ご婦人方の靴はウォーキングするような靴じゃないけど、絨毯を踏むような靴ではない。ちゃんと歩くための靴だ。そう長距離を歩くわけでもないのだから大丈夫でしょう。


 今日は、ご婦人方がいるので歩きやすい沼のほうへ向かった。


 さすがに沼まではいけないけど、途中までに初夏の花が咲いており、見処は結構ある。ただ、草木はそのまま伸びているのがいただけないわね。また村の人たちにお願いするとしましょうか。


 途中まできたら休憩用の伐った丸太に布をかけて一休みする。


「空気が美味しいわね」


「はい。この空気を吸ったら王都や領都には住めませんよ」


 特に王都は空気が悪い。上下水道もあまりないから臭くもある。ほんと、変なところで発展してないから嫌になるわ。


「寂しいなら領都に住んではどう?」


「わたしは廃嫡されたようなもの。ここでの暮らしがお似合いですよ」


 メイドの恨みを買って火傷を負ったことは知られている。そんなわたしが領では暮らせないわ。必要なときに力を貸すのがちょうどいいのよ。


「惜しいわよね。あなたなら顔の火傷くらい関係なく嫁ぎ先は引く手あまたでしょうに」


「貴族社会では傷一つで致命傷になるんですよ」


 お母様とお馴染みでもマルヤー婦人は庶民。貴族社会を知らない人種なのだ。


「……貴族の世界は厳しいのね……」


「領民が生きやすくするのが領主の努めてあり、一族としての義務でもあります。義務を果たさず権利は主張できません」


 わたしが好き勝手生きてられるのは義務を果たしているから。権利だけを主張するなんてできないのよ。


「気遣い感謝します。わたしは結構自由に生きてますからご安心ください」


 幼馴染みの娘として心配してくれてるのはわかる。だからマルヤー婦人の両手を取り、甲にそっとキスをして感謝を表した。

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― 新着の感想 ―
欧州の暗黒時代では義務を果たさない上流しかいなかったけどね。 そのせいで暴動が起きたり疫病が発生したのだから。
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