150 エステメイド
ご婦人方は二十五人。叔母様を混ぜたら二十六人になってしまう。
さすがにこの人数は捌けないので、八、九、九の三班にした。
一班は叔母様。二班はマルヤー婦人。三班はラアナオ婦人に仕切ってもらうことする。
「ローラ。あとをお願いね」
二班と三班は娯楽室でジェドや談笑を楽しんでもらい、庭ではグリムワールで魔法体験をしてもらうわ。
世話はローラを筆頭に、ラティア、アマリア、マーナに任せる。特にアマリアにはグリムワールを教えてあるのでおもしろい芸を見せられるでしょう。
「では、皆様。こちらへ」
五倍に増えても大丈夫なように、最初からエステルームは外に用意してある。
と言うか、最初は八人だったのに増えたものよね。やはりメイドは増やしておいたほうがいいわね。
余剰人員になりそうだけど、これからこんなことが多くありそうな気がする。人員をケチって客を不快にさせるほうが害となる。人件費は別なことで稼ぐとしましょう。
エステルームは煉瓦作りではなく、急造で木造な建物だ。
まあ、わたしの付与魔法で見た目はよくしているので、ご婦人方を不快にすることはないでしょう。
「あら、いい匂いね」
建物に入ると、叔母様が室内に満たした芳香に思わず呟いた。
「ゴズメ王国で使われている芳香です。秘匿なようでなにから作られているかはわかりませんけど、心を落ち着かせる効果があるそうですよ」
これは本当。医薬局開発部の三人が作ったもので、この地で現金収入が欲しいと言うので作ってもらったのだ。材料は国から送ってもらっているみたいよ。
「ここで靴を脱いで、またワンピースに着替えてください」
ここを任せているメイドは、お母様が送ってくれた男爵令嬢たちだ。
料理の準備はこの一月の間に作ってもらい、時間停止を付与した箱に収めてある。あとは出すだけなのでエステメイドに移動させたのよ。
更衣室で着替えてもらい、着ていた服や下着は浄化洗浄の付与を施した箱に入れてもらう。
「ライラ。お願いね」
エステメイドのリーダーを任せたのは美容に興味があった十七歳のライラだ。
かなり美人に分類されるライラは、貧乏なせいで美容に時間もお金もかけられなかった。そのフラストレーションが溜まりに溜まっていたのか、エステメイドにさせたら張り切る張り切る。教えたわたしより上手くなっちゃったわ。
「畏まりました」
まずは足湯でリラックスしてもらい、わたしは叔母様のマッサージをする。
「叔母様。そこに仰向けに寝てください。これから体をマッサージしますね」
「あなたがやるの?」
「はい。と言ってもこの付与魔法を施した手袋で体をなぞるだけなんですけどね」
タラッタ~。癒しの手袋~! と、心の中で未来のネコ型ロボット風に言って、叔母様に見せた。
「あと、無駄毛処理もできます」
この世界でも無駄毛は処理を施される。ただ、技術が未熟であり、カミソリで剃るくらい。よほど上手くやらないと肌荒れしたり毛が太く見えたりとするのよ。
「……姪にやってもらうのも複雑ね……」
「そこは諦めてください。まずは見本となる者がいないと他の方が不安になりますからね」
ビフォーアフターを見せないと、不安でしかないでしょうからね。
「さあ、寝てください」
「……わかったわ……」
叔母様が仰向けに寝てくれたら顔にタオルを乗せてマッサージを開始した。




