148 敬礼
夕食は少々豪華にしただけで、変わったことはしなかった。
半日移動のあとに大露天風呂で驚かせちゃったからね、夕食は大人しめにしたのよ。
ご婦人方もちょっと疲れが見て取れた。お酒を出すのは止めておきましょう。
ローラにお酒は出さないようサインを送る。これは最初から決めていたのですぐに実行された。
夕食は三十分で終わらせ、元気な方は談話室でおしゃべりを。疲れた方は部屋で休んでもらうことにした。
叔母様と打ち合わせしたいけど、叔母様も疲れたでしょうから休んでもらった。
わたしは、自分の部屋に向かい、ローラと夜の部のメイドを集めて報告と引き継ぎをする。
ローラも大人数を相手に仕切るのは久しぶりのことだし、年齢も年齢なので簡単な報告だけを受けて早々に休ませた。
夜の部の引き継ぎはわたしから話す。
不寝番は順番でやらせているからそのことは省き、ご婦人方の対応を伝え、判断ができないときはわたしを起こすよう言いつけた。
夜の部のメイドを向かわせたら護衛騎士四人を呼んだ。
なにかあるとは思えないけど、高貴な方を招いたときの護衛も考えておかないといけない。その予行演習として四人にはがんばってもらいましょう。
と言っても四人で館全体を守るのは不可能。なので、通信できるイヤリングと暗視可能なメガネ。そして、大人数を相手にできるグリムワールを支給した。
他にも支給したいけど、準備期間が短いので今はこれでがんばってもらいましょう。
館の防衛と警備手順はわたしと護衛騎士四人だけの秘密。ローラやマクライにも教えないわ。
「何度も言うけど、これは予行演習。失敗を恐れず、不備があったならどんどん言ってちょうだい」
「はい! 畏まりました」
四人が敬礼する。なんかいつの間にかわたしがやった敬礼がうちの決まりになっている不思議。まあ、なんでもいいんだけどね……。
やる気満々の四人が部屋を出ていったら次はラグラナとランが入ってきた。
王宮からの使者たる代表な二人。外したことでちょっと不機嫌になっている。
二人を信頼しているけど、心を許してはいない。特におっぱい大好きなこととかね! さすがのわたしも皆からドン引きされたら嫌だし。
「ご苦労様。王宮以外から忍び込ませた者はいたかしら?」
お妃様の派閥が動いたと言うことは他の派閥もわたしのことを察した可能性はある。行動力のある派閥なら誰かを懐柔していたりするはずだわ。
「いえ。疑わしい者はおりませんでした」
それは、王宮から忍び込ませた者はいるってことを言っているようなものよ。わかっているのかしら?
王宮なら参加者の情報は集めているはず。この短時間で調べ上げたことからもそれを証明しているわ。なら、万が一のときのために内通者は用意しているはずだよ。その内通者からも情報を得たでしょうからね。
「そう。ありがとう。わたしも明日のために休むわ」
なにか言いたそうな二人に構わず席から立ち上がり、ワンピースのまま寝室に向かった。




