146 射程圏内
「……お湯が冷めないのね……」
まだ緊張が解けないのか、大露天風呂は静かだったけど、叔母様がお湯が冷めないことに気がついて呟いた。
「熱を発する石を至るところに配置していますから魔力が切れるまではこの温度ですね。あと、お湯を循環させて浄化させています。常に綺麗なお湯にしてありますわ」
「なにかとんでもないほど大がかりなのね」
「いずれ高貴な方を招くときのために備えましたからね。雑には造れません」
まあ、ご婦人方が帰ったら改築はするけどね。シャワー設備や庭園を造らなくちゃならないし。
「高貴な方?」
あら? 叔父様から聞いてないのかしら? 事が大きすぎて話せなかったのかしら?
「まだどの高貴な方になるかはわかりません。ただ、そう遠くない未来に訪れるでしょう」
候補は何人かいるけど、お妃様の派閥の方でしょう。様子見としては侯爵婦人かしらね?
「美容に関するものをいろいろ送っていますからね、興味を持たれた方が訪れてくるでしょう」
「あなたはいつから予言者になったのよ?」
「現状から考察した予想です」
わたしは絶対やってくる未来だと考えているわ。
「まあ、それはこちらで対応します。叔母様は領地に集中してください」
ご婦人方にわざと聞こえるように言ってやった。
この中にお妃様の派閥から差し向けた者はいる。その者にこちらの様子をわざと流す。こちらはそちらのことなどお見通し。くるならいつでもきやがれってね。
と言うのはウソで、こちらはお見通し。くるなら万全の用意をしてからこいってこと。つまり、時間稼ぎよ。こっちはまだ準備が調ってないの! 館の防衛だって手をつけてないんだからさ!
「さあ、皆様。そろそろ体も温まったでしょう。お湯から上がって体を冷ましてください。あと、腕や脚を揉むと血行がよくなります」
こういう風にですと手本を見せた。
……もうちょっと灯りを増やしたほうがよかったわね。くっきりはっきり見えないわ……。
この世界、なんでこんなに巨乳率が高いのかしらね。目のやり場に困らないわ。もっと自然に、惜しみなく見えるよう訓練しないと。
ご婦人と言っているけど、叔母様と同じ年代。一番歳上でも四十歳。余裕で射程圏内だわ。
とは言え、日頃の手入れや管理が悪い。垂れているのもまたいい! ではなくて、おっぱいを疎かにする者は許せない。ブラジャーがあるクセにワイヤーが開発されてない悲しさよ。まるで若い者に合わせたかのような作りなのよね。
この機会におっぱい矯正ブラジャーを広めていきましょうかね。
でも、まずは熟れたおっぱいを堪能すると致しましょう。




