145 成人は十八歳
「失礼します。お嬢様、お風呂の用意が整いました」
ローラがやってきた。
しばらくは連絡を優先してノックは省略させているのよ。もちろん、わたしに対してだけよ。
「わかったわ。ご婦人方を広間に集めて」
この日のために服飾メイドと料理メイドを世話係に移してある。さすがに二十五人を館メイドで回すのは不可能だからね。
服飾部は元々メイドだし、料理部は男爵令嬢。数日ローラが教育したら普通にメイドとして働けるわ。
わたしが直接指揮は取れないので、広間に先に向かった。
「こういうとき、最初に向かうのと最後に向かうの、どちらなんです?」
ここはわたしの館であり、隠遁した身。あるていどの礼儀や作法は省略できる。不躾と囁かれても傷つく名誉はないからね。けど、叔母様はそうはいかない。この場合、どうなるの?
「場合によりけりね。貴族間なら最後に。婦人会なら先でも構わないわ。今回はわたしが引率という立場だからね」
「なるほど。伯爵の付き合いは時と場合と言うことですか」
わたしは貴族間の礼儀作法しか教わってない。まあ、それも忘れつつあるんですけどね。下手に覚えていると公の場に立たされちゃうからね。
……なんか、このままいくと公の場に立たされそうな流れだけどね……。
「ナジェスの妻となる方は大変ですね。そう言えば、もう候補はいるんですか?」
決まってはいないまでも候補は決めているはずだ。
「男爵家からもらうことになるかもしれないわね。ナジェスの年代が伯爵家にいないのよ。さすがに五歳下となると離れすぎだからね」
貴族間なら五歳差なんて問題ないと思うのだけれど、貴族の成人は十八歳。成人しなければ結婚はできない法がある。そういうところも元の世界の価値観が含まれてそうな気がするのよね……。
「婚約は十歳からでしたっけ?」
わたしは十四歳のときだったけど。
「ええ。でも、大体は十三、四かしらね。女性となってから婚約を決めるのが習わしみたいになっているから」
そんな習わしがあったのね。初めて知ったわ。
広間に入り、上座に立ってご婦人方を待った。
しばらくしてご婦人方が集まり始め、五分くらいで全員が揃った。あちらもあちらで気を使わなくちゃならないか。まったく、付き合いって大変ね。
「長い移動、お疲れ様でした。今日のためにお風呂を用意しました。と言いましても物語に出てくるような立派なものではありませんけど、皆様が入っても余裕なほど大きなものです。ゆるりとお楽しみください」
入り方はメイドから教えてあり、わたしも入るので実践して教えることにします。
「あ、お湯にはゴズメ王国からいただいた薬草を混ぜてあります。効能はいろいろありますが、精神を落ち着かせて女性特有の病気にも効果があります。五日ほど朝と夜に入るといいそうです」
女性特有の病気はメイドから話してあります。
「さあ、参りましょう」
ご婦人方を連れて大露天風呂に向かった。
本館の横に造った大露天風呂。急遽造ったものなので少々寂しいものではあるけど、そこはわたしの付与魔法で柵に庭園の姿を付与しました。
脱衣場もちょっとロッカールームっぽいのも許してください。こちらも急造で風情なんて二の次なんですよ。
この時代で、それも庶民が集まって裸になるってことはない。貴族気分を味わってくださぁ~いって言っても抵抗はある。なので、湯着を纏ってもらうことにした。
もちろん、まずわたしがお手本となり、ご婦人方の前でやってみせたわ。
久しぶりに自分で着たわね~とか思いながら、叔母様にも見本となってもらい、わたしが手伝いながら纏ってもらったわ。
……なんだろう。この世界で貧乳ってわたしだけなのかしら……?
「叔母様。着痩せするんですね」
あるなとは思っていたけど、予想より一回り大きかった。下着が合ってないんじゃないの?
「チェ、チェレミーも大きくなるわよ」
いや別に自分を卑下したわけではないのだけれど、なんだか慰められてしまったわ。まあ、面倒なのでそういうことにしておきましょう。
「やはり、わたしが試し着しただけではダメでしたね」
貧乳と巨乳の違いが出てしまった。先っちょが目立ってしまっているわ。
まあ、薄布にしたのは生地が集まらなくて仕方がなかったからだけど、まさかこんな副次的効果があるとは思わなかったわ。
湯着を着たらご婦人たちが下ろした髪をメイドたちに纏めさせる。
「できた方から外へどうぞ」
わたしが先導して外に出た。
一応、湯着にはいろいろと付与を施してある。湯に入っても上がっても寒くならないようにはしてあるわ。
「まずは、この大瓶からお湯を掬って体にかけてください。これはお湯に体を慣らせるためと汚れを流すためです」
手桶でお湯を掬い、肩からかける。
それを四回繰り返したら叔母様にもやってもらい、先に露天風呂に入ってもらった。
「では、皆様。お試しください」
一人のご婦人が動き、恐る恐る手桶に手を伸ばし、ゆっくりとお湯をかけていった。
「……気持ちいいですね……」
「ええ。お湯を浴びるというのは気持ちいいのですよ」
手桶をつかみ、背中にかけてやった。
「このくらいで大丈夫ですよ。ゆっくりとお湯に入ってください」
一人が動けばあとは流れるように続き、最後の一人がお湯に入ったらわたしもお湯に入った。
「顔にもお湯を当ててください。効果がありますよ」
両手でお湯を掬って顔に当ててみせる。
叔母様も続いてくれ、ご婦人方もやり始めた。
「まずはゆっくり肩まで浸かって体を温めてください。体がほんわかしてきたら薬湯の効果が出てきますので」
身を沈め、肩まで浸かってみせた。
もうちょっと深くするんだったわね。まあ、おっぱいが浮かぶ光景も素晴らしいけどね。
ムフフ。透けたおっぱいもいいものだわ。




