144 わたしから目線
さて。気持ちを切り替えて叔母様の心配事を聞くことにする。
と言っても愚痴がほとんど。よほどのバカかアホでもない限り、貴族なんて中間管理職みたいなもの。上から下からいろいろ言われてしまうんだからね。
まあ、下から言われるのは領主代理として領にいる叔父様と叔母様。上手く統治しなくちゃならないのだからご苦労様でしかない。
一体なにが楽しくてやっているんだろうとは思うけど、職業選択の自由など存在しない。家を守ること、血を絶やさぬこと、国に目をつけられないように生きること。それが貴族という存在なのよ。
「安心してください。カルディム領に住めてよかったと思わせ、叔父様や叔母様についたほうが得だと思わせますから」
背後にわたしがいることを見せつけてあげるわ。
「ただ、カルディム家はお妃様の派閥に入るよう迫られるでしょう。お友達にはそれとなくお伝えください」
「あなたはどうなの? 妃殿下の下につくの?」
「それはお妃様次第ですね。わたしを優遇するなら下につくのもやぶさかではありません」
「どこから目線よ?」
「わたしから目線です」
恐らく、お妃様(王宮)とコノメノウ様(神殿)は別で動いている。それは、王宮から送り込まれたラグラナたちを見れば明白だわ。
「派閥で生き抜くには価値を示すこと。利用できると思わせることです」
それはこちらも同じ。その派閥を利用できるかだ。
「お妃様の派閥はわたしを利用できるか様子見をしているのでしょう。恐らく、婦人会にも一人は紛れ込ませているかと思いますよ」
増えた理由がそれを物語っているわ。様子を見るために捩じ込ませたのでしょうね。
「だ、誰を?」
「そこまではわかりません。お妃様の下にいる者が命じたと思いますからね。本人も送り込まれたとは思っていないでしょう」
それだけでお妃様の派閥は大きくて組織立っているということだわ。
「まあ、そこは気にする必要はありません。お妃様の行動や考えは大体想像がつきますから。対処法はいくらでもありますよ」
派閥の考えなんてそう変わらない。派閥の維持、拡大、敵の排除の三つに集約できるわ。
今のわたしは敵かどうかを見極められている状態。少しでも敵対行動を取れば消されるでしょうね。
「あちらはカルディム家とわたしを分けて見ています。なので、叔父様と叔母様はカルディム家のために動いてください。わたしは、カルディム家のためとわたしのために動きますから」
面倒ではあるけど、この暮らしを守るためなら頭を使うとしましょう。わたしのおっぱいハーレム──ではなくて! スローライフは始まったばかりなんだからね。




