141 ダメニート臭
「お嬢様。レイア様より手紙が届きました」
まったりとミコノトの尻尾をブラッシングしてあげていると、ローラが叔母様からの手紙を持ってきた。
手紙を受け取り、封を解いて内容を確認する。
「ローラ。婦人会視察の日時と人数が決まったそうよ」
メンバー表だけをローラに渡した。愚痴のほうはわたしの胸に収めておくわ。
「ローラ。今回は予行演習として事に当たってちょうだい。いずれ高貴な方を招くときのために」
「高貴な方、ですか?」
「正確に言うなら高貴なご婦人ね。早めに貴賓館を建てるわ。あ、そうなるとメイドも増やさなくちゃならないわね。ローラ。伝手はあるかしら?」
「わたしが用意します」
とは、ラグラナだ。いたんかい! 気がつかなかったわ!
「じゃあ、ラグラナにお願いするわ。五人以上、十人以下でお願いするわ。侍女経験者もいると助かるわ。高貴なご婦人を世話するなんて伯爵家ではあり得ないからね」
正直言えば王宮に知られる前に用意したいところだけど、王宮の影響力を持つ者がたくさんいるのだから隠すなんて不可能だ。なら、用意していることを教え、調うまでくるなとメッセージを与えたほうがいい。貴賓館として館と分けたらメイドたちも萎縮することもないでしょうよ。
「畏まりました」
「お嬢様。この人数ですとトイレの数が足りないのではないでしょうか?」
急いで二つは増設したのだけれど、それでも足りないと?
「もっと欲しいかしら?」
「はい。先を見据えるなら最低でもあと四つは欲しいかと」
ローラがそう言うならもっと欲しいってことでしょう。可能なら一部屋に一つ、ってことかしらね。
そうなると小手先の改築では根本的な解決にはならない。根本から変える必要があるってことでしょう。
長椅子から立ち上がり、棚に並べた魔力の壺を眺める。
毎日コツコツと集めた魔力は十二分にある。けど、これは目的があって貯めていること。あまり使いたくないのよね。
かと言って他の手段があるかと問われたら「ない」と答えるしかないわ。まあ、アイデアはあるんだけど、どれも魔力を使うものばかり。結局、問題解決となならないのよね……。
「コノメノウ様とタルル様にお願いしてみましょうか」
お二方からは一日の魔力を半分いただいている。それを七割にしてもらえないか相談してみましょう。
「構わぬぞ」
「構わないわ」
なんて相談したらあっさりと許可をもらえました~! 相談してなんだけど、七割は結構なものよ!?
「酒を飲んでいる毎日だ。他になにもしとらんのだから八割くらい持っていっても構わんよ」
「わたしも毎日は困るけど、三日に一回くらいなら八割でも構わないわ。最近、食べすぎで魔力過多になっているしね」
なにかダメニート臭がするけど、二人のご厚意として受け取っておきましょう。うん。




