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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん


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133 梅は万病に効く

 ミコノトの服もでき、平和なスローライラが続いている。


「沼のほうにも梅って生っていたのね」


 ほんと、自分の目は節穴かと言いたいくらいよね。沼の周り、大体梅の木で囲まれているじゃないのよ。


「綺麗ね」


 七分咲きくらいかしら? 満開はもうちょっとかかるわね。


「満開になったら花見でも行いましょうかね」


 桜じゃないのがちょっとがっかりだけど、本来は梅を見てたとかなんとか。その辺のことはわからないけど、これだけの梅の花が咲けば鮮やかでしょうよ。


 その下で美味しいものを食べて、軽いお酒を飲む。きっと雅でしょうよ。


 長老様がいる岩がよく見える場所にいくと、珍しく長老様が沼を泳いでいた。


「泳いだりするのね」


 亀が泳いでいるところを見るの初めて。あ、海亀が泳いでいるのはテレビで観たことはあるか。


「泳いでいると言うより浮いている感じだけど」


「まあ、そうとも言えるわね」


 ミコノトの発言に同意しておく。そう言われたらそう見えてきたわ。


「あなたは長老様をどう見えているの?」


「大きな亀、としか見えないわね。チェレミーはどう見えるの?」


「でっけー亀」


 お嬢様としてはお口が悪いけど、素直な気持ちはそれだ。二メートルの亀を見たら皆そう言うはずだわ。


「……チェレミーって、たまにお嬢様らしからぬこと言うよね……」


「お嬢様と言う服を着ているだけよ。服を脱いだ姿は見せられないけどね。立場があるから」


 わたし、おっぱい大好きどえ~す! おっぱい触らせろや! とか、さすがに言えないわ。本当に立場なくすわ。


「がっかりした?」


 下から覗くようにミコノトを見た。わたし、あざとい。


「ううん。チェレミーはどんな姿をしていても好き」


 わたしを抱き締めるミコノト。おっぱいが顔に押しつけられて最高だわ。ゲヘヘ。


「チェレミー様。長老様がこちらにきます」


 ルーアに言われて視線を向けると、確かに長老様がこちらに泳いで? 流されて? 回りながらこちらにやってきた。


 輪っかを出して問うてみた。なにかありました?


 ──梅の実がなったら沼に放り投げてくれ。わしは、梅の実が好きでここに住み着いたのだ。


 へー。亀って梅の実を食べる……の? そんなこと聞いたことないんだけど?


「わかりました。梅の実がなったら長老様に献上致します」


 ──助かる。それと、梅の実は万病に効くものだ。お前も食べるといい。


 へー。異世界の梅にはそんな効果があるのね。これは、梅酒に梅ジュースに梅ジャムを作ってみるとしましょうかね。


「ありがとうございます。梅の花が満開になったらきます。美味しいお酒を持って」


 ──ああ。楽しみにしておる。


 泳いでいるのか流されているのかわからない動きで遠ざかっていった。


「謎の生き物よね」


 おっと。お前もな、とか言っちゃう君は腹ぱんな!


 館に戻ったらローラを呼んで三日後に館の皆で花見をやることを伝えた。


 さすがに館を空にはできないので、二日に分けてやることにする。


「細かいことはローラに任せるわ。資金はマクライと相談して」


 丸投げとは言わないで。館を回しているのはローラとマクライ。わたしが下手に口出すより任せたほうがスムーズにいくのよ。


 まあ、わたしの意向を知るために話し合いはするけど、基本、丸投げ。よろしくお願いスマッシュ!


 ウォーキングを終えたら朝食。そして、魔力籠めと、いつものルーティンをこなした。


 人生ってなんだろう? とか思うときがあるけど、別に波乱万丈を望んでいるわけじゃない。日々のちょっとした変化を感じ取れたらそれで満足なスローライフを望む人生で構わないのよ。


 結構、波乱万丈な人生じゃね? とか言わないで。わたしがないと言えばないのよ。現実を叩きつけないで!


「そうだ。リキュールと角砂糖を創っておかないと」


 錬金と創造の壺でチャンチャカチー(特に意味はなし)。リキュールと角砂糖ができましたー! どうやってよ? とかはそれぞれの脳内で処理してくださると助かりマンモス♥️


 ……その世代を精一杯に生きていたとだけ伝えておこう……。


「お嬢様。花見なのですが、三日にならないでしょうか? 職人たちも参加したいと申しまして」


 夕方頃、ローラがそんなことを言ってきた。


「職人か。そこまでは考えてなかったわ」


 館だけやって職人は抜きとかにしたら大顰蹙ものね。危なかったわ~。


「職人も、となると村のほうまで伝わっちゃうわよね?」


「はい。そうなるかと思います」


 ローラもそう思って言ってきたのね。ほんと、そういうところが優秀なのよね……。


「うーん。さすがに四日五日とするのは問題よね」


「はい。費用がかかりすぎますし、わたしたちもつきっきりとはいきません。三日が限度かと思います」


 それ以上はやるなと暗に言っているのでしょう。わたしも三日以上やる気はないわ。花見は一日で充分だものね。


「では、職人と村に伝えて。期間は三日。雨のときは中止。風が強くても中止。晴れていたら期間も短縮する。料理は持参。館でも出すけど、料理はお金を出して買ってもらうわ。ただ、麦酒は館から出してちょうだい。他のお酒は販売としましょう。どうかしら?」


「それでよろしいかと思います」


「またなにかあったら訊きにきてちょうだい」


「畏まりました」


 ハァー。花見するだけで問題が出てくるか。休みを与えて勝手にやれ、ってことにしたほうが楽だったかしら?


 なんて後の祭りね。って、祭りはまだ始まってもいないけど!

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