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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん


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124 ってなると思った?

「…………」


 なにか変な感じがして目が覚めた。


「あらら」


 そこは洞窟っぽいところで、壁には魔法の光が灯っていた。わたし、魔王を倒してくれ系に召喚されちゃった?


 ベッドごとと言うことは空間系転移っぽいわね。館に侵入したのはこのためだったってこと?


「目が覚めたようね」


 女の声がして振り向いたら闇色のローブを纏った一団がいた。


 周囲を見回したら地面には魔法陣っぽいものが。転移系魔法陣と逃げないための魔法陣かしら? 外から入ってこれない機能もあったらいいんだけど。


「わたし、しっかり眠らないと本領発揮できないのよね~」


 魔力の回復具合からして真夜中に転移させられた感じね。嫌らしいこと。


 指輪からグリムワール──が出ない。他の指輪も発動──しない。


「魔法は封じた」


「なかなか凄い魔法陣ね。世の中にはこんな技術もあるのね」


 わたしは付与魔法しか使えないので魔法陣とかまったく知らないのよね。この魔法陣が消えたらモノクルに覚えさせないと。


「それで、わたしを捕まえてどうしようというのかしら? 帝国に連れてっちゃうのかしら?」


 誘拐拉致は万死に値する行為よ。帝国そのものが滅んでも罪が消えることはないんだから。


「随分と落ち着いているな?」


「慌てる状況でもないからね」


 まあ、まさかベッドごと転移させられるとは夢にも思わなかったけど。


「でも、よく館から寝台ごと転移させられたこと。館全体に転移妨害の魔法を施してたんだけどな~。あなた、天能持ちかしら?」


 考えられるのはそれでしょう。魔法を凌駕できるのは天能ギフテットしかないわ。


「……さすが帝国にケンカを売るだけはあるな……」


「わたしとしては帝国とは仲良くしたいんだけどね。コネメノヒメに言ってくれない? 帝国から手を引けって」


 闇色のローブを纏った女の口許が微かに動いた。


「あら。コネメノヒメの関係者かしら? 今の反応からしてかなり近い者ね」


 ウソです。はったりです。次の言葉で判断しようと思っていまーす。


 どう出るかな? と意味ありげな顔で女を見る。


「時間まで大人しくしているんだ」


 逃げたか。まあ、いいわ。


「備えあれば憂いなし。ベッドごとで本当に助かったわ」


 本当は館が占拠されたときに備えたんだけどね。なにが幸いになるかわからないものね。


 ベッドの引き出しから服を出して着替えた。


「見張りも立てないってダメな人たちだこと。わたしを舐めすぎよ」


 これだけ用意周到なことをしていて肝心のわたしのことを全然理解してないわ。ただの小娘と思ったのかしら?


 それだけで影の実力もあの女の価値もわかるというもの。あれは使い捨てだわ。


 別の引き出しから剣とナイフを出した。


 錬金の壺があれば銃を創れたりするんだけど、世界観にそぐわない。わたしは世界観を大事にする元男なのよ。


「なんて思った時代もあったけど、魔法無効化されたら手も足も出ない。今のわたしはか弱い女の子なのよ」


 剣を覚えたい! とか親に言ったら怒鳴られるのがオチ。踊りの練習が増えるだけよ。剣に変わる武器を用意しなくちゃならないわ。


 剣を入れていた引き出しから爆弾を詰めた鞄を取り出した。


 錬金の壺を使えば火薬を作るなんてお茶の子さいさい。ライターだって作れたわ。


「まずはこの魔法陣がどういうものかよね」


 剣を抜いて突き出し、魔法陣の外に向かって歩いてみた。


 魔法陣から剣が出たからそのままいける、と思ったら見えない壁にごっつんこ。強かに鼻とオデコを打ってしまった。いったーい!


「意外と強度高いわね」


 痛みが引いたら見えない壁を叩いてみた。


「剣や鞄、服は通るけど、肉体は通らないか」


 息を吹きかけると返ってきた。細かい設定されているのかしら?


「……転移と出られないのは別かしら……?」


 転移魔法はある。けど、そう簡単にできるものではないし、世間に広まってないってことは技術的に難しいってこと。やれるとしてもこんな詰め込み魔法陣なんてちょっとやそっとで作れるものではないはずだわ。


 あの女の天能ギフテットもそう強いとは思えない。わたしも天能持ちだからわかる。チートな能力をみせるには凄まじい魔力を使う。距離なんて関係なしの転移ならコノメノウ様級の魔力がないと無理でしょう。


「そうなると、この魔法陣は転移と関係ない?」


 館には転移妨害の付与を施してある。それを無視してとなると違う力でやったってことになるわ。


「どんな力かしら?」


 まったく想像がつかない。超能力とかかしら?


 まあなんにせよだ。今がチャンスってことには変わらないわ。


 これはわたしの勘だけど、わたしを転移させたことであの女の魔力は減っているはずだ。あまり覇気がなかったしね。


「ちょっともったいないけど、背に腹はかえられないわ」


 シーツを丸めてライターで火をつけたら魔法陣の外に放り投げた。


「煙は出ないか。眠り薬でも満たしてわたしを眠らせて運ぼうとしたのかな?」


 と言うことは、ここから出れたら魔法は使えるってこと。準備時間がなかったみたいね。


 さらに毛布を出して火を大きくする。うん。煙が中に入ってこない仕様にもなっているわけか。使い手を捕獲できたら連れて帰ろうかしら?


 なんて考えていたら煙が流れていき、騒がしくなった。

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